本研究では,大学教育における教員と図書館員の連携構築に関する比較研究の一環で,米国のミシガン大学,カナダのウエスタン大学,フィンランドのタンペレ大学のケース・スタディを行う。その目的は,複数の大学のケース・スタディをもとに,教育の質保証の文脈において,教員との連携を構築するための図書館員による戦略とこれに影響を与える図書館内外の条件について,次に示す3つの研究課題を明らかにし,各ケースのモデルを完成させることにある。(1)大学図書館が実施する学習支援や教育支援において,教員と図書館員はどのように連携しているのか,(2)図書館員の教員に対するアプローチの中で,何が教員と図書館員の連携の構築を促す要因となっているのか,(3)教員と図書館員の連携の構築を促す大学図書館内外の要因は何か。 文献調査及び訪問調査をもとに,各ケースのモデルを構築する。これに加えて,完成した各ケースのモデルを,これまでの研究をもとに構築した米国のアーラム・カレッジ及びカナダのクイーンズ大学のモデルも加えて比較分析することにより,図書館員による教員との連携構築の戦略について類型の枠組みを構築する。2015年度及び2016年度には,ミシガン大学,タンペレ大学で訪問調査を行った。現在は,ミシガン大学のケース・スタディについて国際学会で発表する準備を進めている。 最終年度である2017年度には,タンペレ大学とウエスタン大学で訪問調査を行った。タンペレ大学では図書館員と部局の教員に聞き取りをした。ウエスタン大学では,教育支援センターのセンター長,センターの関係者,図書館員に聞き取りを行い,内部資料を収集した。比較ケース・スタディについては,国際学会で成果の一部を口頭発表し,論文としても公表した。これに加えて,大学教育における教員と図書館員の連携構築に関する文献レビューを国内の学会誌で公表した。
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