研究課題/領域番号 |
15K00450
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川崎 良孝 京都大学, 教育学研究科(研究院), 名誉教授 (80149517)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | アメリカ公立図書館 / 図書館空間 / 図書館サービス / 社会的責任 / 知的自由 / 日刊新聞 / マイノリティ / 階級 |
研究実績の概要 |
本プロジェクト「公立図書館という空間に関する歴史横断的研究」は、公立図書館という空間に関する基本的な認識が、(1)「1890年代」、(2)「1960年代」、(3)「21世紀」という3つの時期に大きな転換があったという仮説を実証することを目的にしている。 平成27年度の研究計画は以下であった。(1)「1890年代の図書館空間」、(2)「1960年代の図書館空間」、(3)「21世紀の図書館空間」について、各担当者は各自の課題について資料の収集を中心に研究の具体的な構想を練り上げる。しかし本研究の全体についての歴史的展望を連携研究者が具体的に把握できるようにするために、また研究全体の問題意識などを共有するために、3つの領域のなかで一番基礎的な(1)「1890年代の図書館空間」の研究を先発させ、28年度前半には完成の域にまで高める。ここでのキーワードは、図書館サービス、図書館空間、日刊新聞、階級、大都市公立図書館などである。 計画どおり、3つの領域のなかで一番基礎的な(1)「1890年代の図書館空間」(研究代表者の川崎が担当)の研究を先発させ、この研究領域の一端は、2016年に「日刊新聞とアメリカの大規模公立図書館:19世紀末から20世紀初頭にかけて」(『図書館界』)に掲載された。『図書館界』は日本図書館研究会の機関誌で、査読雑誌である。さらにこの領域を深めるために、引き続き研究を進めている。 また(2)「1960年代」、(3)「21世紀」については、連携研究者の吉田右子(筑波大学)、中山愛理(大妻女子短期大学)、久野和子(神戸女子大学)が、おのおの担当する各論について論文執筆に向けた資料集めを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
応募時の計画調書によると平成27年度の研究計画は、(1)「1890年代の図書館空間」を先発させるとともに、(2)「1960年代の図書館空間」、(3)「21世紀の図書館空間」について、各担当者は各自の課題について資料の収集を中心に研究の具体的な構想を練り上げるとなっている。しかし本研究の全体についての歴史的展望を連携研究者が具体的に把握できるようにするために、また研究全体の問題意識などを共有するために、3つの領域のなかで一番基礎的な(1)「1890年代の図書館空間」の研究を先発させるというものであった。 本プロジェクト「公立図書館という空間に関する歴史横断的研究」が採択されたのは、平成27年10月下旬のため当初の計画調書に記載し実現できなかったものがあるのは事実である。例えば平成27年夏に京都大学での研究会(一般参加のフォーラムの形で行う)の実施や、外国での資料収集などは、今年度中には実施できなかった。 しかし連携研究者などとは日常的に連絡があり、こうした研究テーマへの関心は共有していた。そして科研プロジェクトとして研究組織である相関図書館学方法論研究会を正式に開いたのは12月に入ってからで、東京(明治大学)で開催した。そこでは本プロジェクトの全体構想の確認と具体的な進め方(特に(2)「1960年代」、(3)「21世紀」)を検討し、研究会会員のこれまでの業績を土台に、各論執筆の具体的検討を行った。 このように本年度の科研プロジェクトは12か月ではなく、実質的に5か月であった。しかし研究自体の進展については大した齟齬はなく、連携研究者の研究経歴や力量からしても、平成28年度からは元の計画調書のとおりに研究を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の前半には、(1)「1890年代の図書館空間」の研究を終え、29年度には(1)について研究代表者川崎の単著として上梓できるようにする。28年度は(2)「1960年代の図書館空間」がまとまる段階まで進め、執筆ができたところから学術雑誌に投稿する。と同時に、(3)「21世紀の図書館空間」について、各担当者は最新の研究や実践の理解に努める。(2)「1960年代の図書館空間」でのキーワードは、知的自由、社会的責任、中立性、アウトリーチ、先住民への図書館サービス、図書館サービス基準、連邦の関与などである。また以下のような日程で、計画を組んでいる。 平成28年5月:相関図書館学方法論研究会を東京(明治大学)で開催し、特に上記の(2)と(3)について集中的に討議を行う。研究会のメンバーには上掲の吉田・中山・久野(以上連携研究者)に、論文執筆者として三浦太郎(明治大学文学部・准教授)と福井佑介(京都大学大学院教育学研究科・講師)を加える。 平成28年9月:相関図書館学方法論研究会の開催に加えて、公開の(国際)図書館フォーラムを京都大学で開催する。後者は、研究会会員の研究成果を公開し、討議の場を設けることで、研究者や図書館員との対話の場を設ける。 平成29年3月:東京で相関図書館学方法論研究会を実施し、最終年度に向けての取り組みを確認する。本プロジェクトでは、川崎の『新聞・階級・図書館の空間配置:アメリカ公立図書館 1850-1930年』(仮題)、研究会会員の共著『現代の図書館思想の形成と展開:図書館というスペースを考える』(仮題)を最終成果とするが、その実現に向けて研究活動を行う。 なお本プロジェクトの担当者は研究の過程で、各論の部分は各執筆者が積極的に、学術雑誌、学会、講演(国外を重視する)などで発表し、社会に還元していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
約43万円を平成28年度に持ち越すことになった。43万円の内訳は、おおよそ物品費13万円、旅費11万円、人件費9万円、その他10万円である。その理由は本プロジェクトの採択が平成27年10月の下旬だったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
この持ち越した43万円については、平成28年度の5月に東京で実施する研究会、9月に京都大学で行う公開の(国際)図書館フォーラムおよびその旅費に充当する予定である。
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