研究課題/領域番号 |
15K00453
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
上田 修一 立教大学, 文学部, 特任教授 (50134218)
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研究分担者 |
三根 慎二 三重大学, 人文学部, 講師 (80468529)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 公共図書館 / 大学図書館 / 読書 / 図書館利用 / ウェブ調査 / オープンデータ |
研究実績の概要 |
この研究は,大学図書館と公共図書館の利用の実態を大規模データの利用と新しい調査方法の導入により,明らかにすることを目的としている。従来は,図書館利用に関する調査は,単発的に事例として発表されることが多かったが,ここでは,これまでの調査例を分析しつつ,全体論的なアプローチを試みる。また,大学図書館の利用データにみられるように,データの利用公開とその手続きについても検討を行う。 初年度は,まず,大学生の図書館利用パターンを明らかにすることを目的とし,大学図書館の入館データと貸出データのパネルデータを用いた調査を行った。得られた入館データ約80万件,貸出データ約12万件を分析対象とした。入館と貸出は,1年次から4年次までに増減があり,ほぼ同じパターンを示すこと,2年にわたり図書館を全く利用しない学生が一定の割合で存在することなどが明らかになった。 次に,読書と公共図書館利用に関する調査を行った。1979年に当時の内閣総理大臣官房広報室が行った「読書・公共図書館に関する世論調査」および,その10年後の後継調査と同じ設問を用いて,2016年1月にウェブ調査を行った。調査内容は,(a)読書,(b)本の入手先,(c)公共図書館の利用状況である。全国の15歳以上を対象とした。平均読書率は,1979年の60.5%に対して,2016年では76.2%となった。読書率は上昇していたが,読書冊数は月平均1冊未満が,32.1%から48.3%と増えていた。読書への強い志向はあるものの,実際には,読む量は減り,これが出版に影響を与えている。そして,読んだ本の入手先として.1979年に図書館は,7.9%だったが,2016年には24.0%と顕著な増加傾向をみせている。書店からの入手は,76.3%から51.1%に減っているが,図書館がこれを補っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画に従い,まず,公立図書館利用に関して,オンラインパネル調査を行った。その結果の集計は終了し,分析と論文執筆を行った。 大学図書館に関しては,学生を対象として行われている学生生活実態調査に着目した。悉皆調査の場合と標本調査の場合とがあった。実施する大学の質問項目は多様であるが,図書館利用頻度や利用目的が質問事項となり,学生の学年や学部などとのクロス集計がなされている例も多い。これらの調査報告を収集し,全体の傾向をみた。この結果に基づき口頭発表を行った。 次に一つの国立大学図書館の2年間にわたる入館,貸出データを入手し分析して得られた知見について口頭発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 公共図書館の利用調査 公共図書館の利用調査を,調査者が調査対象者に面接して行う調査である個別面接調査を委託して行う。独立して行うには,質問数が少なく,また,費用が高額となるため,調査会社が複数の調査依頼主からの面接調査依頼を組み合わせて行うオムニバス調査で実施する。層化3段無作為抽出法で選択された数千人に対する個別面接調査結果を入手する予定である。この調査結果を,初年度に行ったウェブ調査と比較することにより,読書と図書館利用に関する変化をみるとともにウェブ調査の評価を行う。 (2) 4~5大学図書館を対象とした入退館データの入手と分析 既に,二つの大学図書館か入館や貸出データを入手している。可能性のある大学図書館と交渉し,この対象をさらに増やして,大学図書館利用における共通したパターンを明らかにする。 (3) 図書館の利用と要因のデータの分析とモデル化 以上の調査結果をもとに,図書館の利用の定義を行い,利用と要因のモデル化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウェブ調査を委託して行ったが,委託先が調査費用について予定外の値引きをしたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に請求する180万円と未使用額9,060円を合わせた1,809,060円について,以下のように使用する予定である。(a)個別面接調査 オムニバス調査委託 100万円,(b)調査打ち合わせ旅費 3.5万円×8回+6万円×4回 52万円,(c)資料費 関連書籍,論文ペーパービュー 20万円,(d)消耗品費 ソフト,トナーなど 8万9,060円
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