研究実績の概要 |
図書館の利用や読書に関して,実態を示すことがないまま議論がなされてきた。この研究の目的は,図書館利用や読書を広い視野から定量的に把握することである。SSJDAの二次分析に基づくと,月1回以上の公共図書館の利用者は13.6%だった。また公共図書館の利用には,継続性が見られ,伝統的に指摘されてきた年齢,学歴,世帯収入などが公共図書館利用と有意であることが確認された。大学生による大学図書館の利用動向を把握するために,学生生活実態調査報告と入館データの分析を行った。その結果,大学生の8割近くが利用している,週一回以上の利用者は半数以下,入館回数はロングテールの傾向を示していた。国立2大学を対象とし,大学図書館の業務データを入手し,進級にともなう大学生の大学図書館の入館および貸出に関する利用パターンを明らかにした。入館・帯出の大部分を学部学生が占め,文系の学生は理系よりも課程にかかわらず多く帯出し,帯出図書のほとんどは専門書だった。読書に関する面接調査では,1か月に1冊以上,本を読むという指標では,2016年の結果は,既往調査のある1979年より高かった。現在では年齢が高くなるほど,読書をする人々が減るという傾向は見られず,以前は顕著だった読書と年齢の関連は薄まっている。 最終年度は,成人が何を読書とみなしているか,どの程度本を読む人々がいるのか,何を読んでいるのか,読者群は縮小していないかを明らかにするために,二つの調査を行った。読書対象の範囲には,小説などのフィクションをはじめ取り付きやすい本というコンセンサスがある。日本人の4割以上が,月1冊以上本を読んでいる。読む対象は小説が6割を占め,知識や情報を得るための本は3割程度であった。読書冊数は減少しており,日本では読書は娯楽とみなされつつある。また,全ての調査を『読書と公共図書館利用報告書2017』として公表した。
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