近年,入試における採点ミスが社会問題として取り上げられることが多い.また,教員の業務内容の多忙化によってテスト問題の作成や採点業務の不可軽減の必要性が高まっている.この両者の社会的問題を改善するために,本研究は,答案画像中の手書きされた4つの採点記号パターン「〇,△,×,チェック」と部分点数字パターン(0~9)を答案から分離抽出し,分離抽出されたパターンに対して文字認識し,その認識結果に基づいて採点者の採点ミスを発見支援するシステムの開発を目指した. システム開発に向けた技術的な課題の解決として,大まかに活字印刷された問題文や解答欄枠等,受検者が記入した解答文字列,採点者が書き込んだ採点記号および部分点が存在する答案用紙を電子化した答案画像から色情報によって,採点記号および部分点パターンだけを分離抽出する処理手法,これらの2つのパターンを高精度に認識させるための文字切り出しおよび認識処理手法,認識結果に基づいた採点者への採点ミス発見およびミス発見場所の提示方法の提案が必要であった. 本研究費によって,3年間の研究実施期間において上述の3つの課題を解決する処理手法を提案し,その提案に対する処理精度の確認,各処理を用いた採点ミス発見支援システムの開発を目指した. 研究成果として,模擬答案データセットの構築ならびに認識辞書パターンの作成,採点記号の分離抽出手法の提案と性能評価,手書きされた採点記号と数字認識精度の確認,採点ミス発見支援システムの開発,があげられる.
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