研究課題/領域番号 |
15K00459
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
伊藤 賢一 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (80293497)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 青少年 / ネット依存 / 不健全なインターネット利用 / パネル調査 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続いて、前橋市教育委員会、NPO法人・青少年メディア研究協会と共同で、前橋市内の小中学生とその保護者を対象としたアンケート調査を実施した。回収票数は、小学生(5・6年生)2,453票、中学生(全学年)3,358票、保護者4,715票である。 調査項目は、生徒を対象とした調査では、本研究課題の主要目的であるネット依存度調査に加えて、ネット端末の所持率やアプリの使用頻度、ネット端末の使用に関する保護者との約束、生活満足度等を入れてあり、保護者を対象とした調査では、保護者自身のネット端末の利用、子どものネット利用に関する意識、家庭での約束事等である。 今年度の調査によって3年連続でネット依存度のスクリーニングテストを行ったことになり、貴重なデータが得られたと言えるが、特筆すべきは、本研究課題が市内の中学6校の生徒に関するパネル調査を含んでいることである。3年にわたって追跡可能なパネルデータは、合計431票(男子212票、女子219票)が得られた。これによって、たとえばネット依存の高リスク利用者と判断された生徒のうち、1年後には3割前後が潜在的リスク利用者となるが、およそ半数はやはり高リスク利用者のままであり、これに対して、潜在的リスク利用者の場合は、4割弱が潜在的リスク利用者に留まり、12~13%前後が高リスク利用者に移行することなどが判る。このようなデータは他にほとんど存在せず、貴重なものと言える。 公表された今年度の業績としては、雑誌論文1本(伊藤 2018)にとどまったが、これは前年度までの調査に基づくもので、 上記のパネル調査を用いた分析はこれからである。平成30年度中に、国内外の学会報告と論文発表を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な目的は、青少年の不健全なインターネット利用(PIU)、とりわけネット依存に関するパネル調査を実施してそのリスク要因の特定と啓発活動の効果を測定することであった。平成27~29年度の3年間にわたり、前橋市内の5つの中学(学校の抽出は前橋市教育委員会にお任せした)の生徒についてアンケート調査を実施し、追跡可能なパネルデータを得られたことで最低限の段階はクリアしたと言える。平成27年度に中学1年生、28年度は中学2年生、29年度は中学3年生になるこの学年のすべての生徒についてアンケート調査を行い、クラス替えがあっても追跡できるように紐付けされたデータセットが得られた。 中学1年生から3年生にわたる縦断型調査データは他に類がない貴重なものであるが、現段階ではまさに本格的にこのデータを分析しているところであり、結果の公表はこれからである。いったん高リスク利用者と判断されると、高校受験を控えた中学3年生になっても高リスク利用者の状態から抜け出せなくなることがすでに判っており、早期の教育啓発が必要といえる。他にも、ネット端末の利用開始年齢、使用しているアプリの種類や家庭での約束の有無・内容、生活満足度、睡眠時間との関連など、分析しなければならない項目は多く、作業が進行中である。 最終年度である平成30年度に分析結果の公表を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
すでに基礎的な調査は終えているので、最終年度である今年度は得られたデータの分析と公表を行っていく予定である。 学会報告として少なくとも海外の学会1件(世界社会学会議、トロント:カナダ、7月)と国内学会1件(社会情報学会、島根大学、9月)を予定しているが、さらに別の機会があれば報告していきたい。また、論文での発表、最終報告書の作成も計画している。 当初の予定に入っていた高校生調査、もしくは中学生を対象とした別の調査をするかどうか検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に参加予定だったが参加できなっかた海外学会(世界社会学フォーラム、ウィーン)への渡航費用が残っている。この分は平成30年7月開催予定の世界社会学会議(トロント)への参加費用・渡航費用に充て、本研究課題の成果発表に用いたい。
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