研究実績の概要 |
申請時の研究計画では、本研究課題は複数のアンケート調査を用いて、(a)何が青少年の不健全なインターネット利用(Problematic Internet Use, 以下PIU)を引き起こしているのか、(b)PIUはどのような影響を及ぼすのか、(c)教育や啓発の効果はどの程度あるのかを解明することを目指すものである。 この課題に応えるために、前橋市教育委員会、NPO法人青少年メディア研究協会と協力して平成27~30年度にかけて前橋市内の小中学生(小学生は5・6年生、中学生は全学年、市内すべての小中学校から一学年当り1ないし2クラス抽出)とその保護者を対象としたアンケート調査を実施した。とくに平成27年~29年度にかけて、市内6校の中学生を対象とした縦断型の追跡調査を行い、経年変化を測定した(当初高校生への調査も計画していたが、予算的・時間的制約から断念せざるを得なかった)。 その結果、(a)青少年におけるPIUには特に学校生活への適応が関係しているらしいこと、ゲームやSNSだけでなく動画との関連も強いこと、(b)一旦PIU(特にネット依存状態)に陥るとなかなか抜けだすことが困難になること、(c)直接的にPIUに予防的効果を及ぼすような家庭のルールは検出されないこと、が明らかになった。こちらの結果については、国内外の学会での報告や論文(伊藤 2017, 2018a, 2019)、著書(伊藤 2018b)、各種講習会や講演等で公表し、社会に還元している。本研究課題のように広範な追跡調査によってこの問題を解明しているものは多くないので、今回得られたデータには学術的な価値がある。 平成30年度は前年度までの調査に加えて、とくにオンラインゲームに関する調査項目を設けて補足的な調査を行っている。今後も継続して分析を行い、関連する学会等で成果を公表していく予定である。
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