研究課題/領域番号 |
15K00460
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 秀幸 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (30332589)
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研究分担者 |
高木 聡一郎 国際大学, GLOCOM, 准教授(移行) (80775437)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イノベーション・ケイパビリティ / 特許 / 情報通信産業 / 自律分散型組織 / ブロックチェーン |
研究実績の概要 |
第1に、東アジア企業を中心にして、特許データを代理変数としてイノベーション・キャパシティの時系列変化を分析した。全米経済研究所の特許分類によりハーフィンダールインデックスを用いて、東アジア企業の特許の多様性を計測し、特許分野の集中が進んでいる全体的な動向の特徴などを明らかにした。第2に、グローンバルな情報通信産業のイノベーション・ネットワークの特徴を実証的に明らかにすることを目的として、特許データのうち、共同出願に基づくネットワークに焦点を当てて分析を行った。第3に、前項の産業に所属する企業の単独出願特許を対象に、特許引用関係に着目して影響度の大きい特許について、各企業のイノベーション・ケイパビリティの相対的な位置付けの定量化を試みた。本研究の特徴の一つは、引用関係の特徴を抽出する際にページランクの手法を用いたことにある。こうした新たな分析の結果、台湾のTSMCのように必ずしも特許出願数が多くない企業であっても、急速にイノベーション・ケイパビリティを高めている可能性があることを示した。第4に、情報通信企業における特許資産とと企業価値の関係を定量的に分析した。取得された特許の蓄積である特許資産と特 許申請という資産となる前の活動の両者の比較を試みた。しかしながら、十分な考察を得るまでの結果は得られない段階にとどまった。第5に、ブロックチェーン技術が可能にする自律分散型組織のコンセプトによって、企業組織や職業にどのような影響があるかを分析を行った。自律分散型組織は国という概念を越えて、不特定多数の参加者によりサービスを運営するものであり、国としてのイノベーション・ケイパビリティの考え方や政策に大きな影響を及ぼす可能性がある。取引コスト理論に基づき理論的フレームワークを提示した上で、米国労働省データを用いて自律分散型組織に適した職業を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特許資産と企業価値の関係については、新たな指標を試みる中で、先行研究とは異なる結果が得られており、その妥当性の検証に時間を要している。また、特許に関連する論文等との関連付けについては、データへのアクセスが困難であることが判明しつつあり、その取組が遅れている。さらに、イノベーション・ケイパビリティに関する研究を進める中で、ブロックチェーン技術をはじめ、国の枠組みを前提としない経済活動が増加しており、こうした変化をどのように研究内容に反映するかについて議論と検討に時間を要した。着実に研究成果を上げてはいるものの、こうしたこともあり、そのほかの項目を含めて全体としてやや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
特許と企業価値の関係に関しては、分析要素をさらに精査することで、学術的な意義を引き続き追究する。特許に関連する論文との関連付けについては、それが難しい場合には、独立して扱うなどの方策をさらに検討する。ブロックチェーン等の技術による自律分散型組織とイノベーション・ケイパビリティ/キャパシティに関する研究については、公刊予定の論文である"Organizational Impact of Blockchain through Decentralized Autonomous Organizations"において、技術による枠組みの変化についての反映の方向性は定まったため、それに基づく、今後の研究を加速させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
イノベーション・ケイパビリティに関する研究を進める中で、ブロックチェーン技術をはじめ、国の枠組みを前提としない経済活動が増加しており、こうした変化をどのように研究内容に反映するかについて議論と検討に時間を要した。そのため、当初予定していた物品の購入や旅費の支出を先送りした部分があったため、次年度使用額が生じることとなった。検討は終了したため、翌年度は当初計画に加えて先送りした物品購入や旅費の支出を行う予定である。
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