基本的対象である東南アジア地域大陸部における人の流動に関する情報について、社会的役割分担や専門性等人材面での特色に新たに着目した考察を実施した。その際、現所属研究機関における研究情報の活用等も考慮し、国内における人材の中でも特に高度人材の代表例として博士課程修了者及び単位取得退学者等に関するデータの分析を、総合的な研究成果の前段として実施した。その成果は、本年の所属機関発行の報告書としても、まとめることができた。この研究では、調査対象として所属機関が収集する「博士人材データベース」に所蔵される博士課程在籍者及び修了または単位取得退学の該当者の情報を分析している。制度の異なる経済的支援のもとで、キャリアパスを社会的流動と同義であるととらえた場合にどのような影響がみられたか分析した結果、全てのタイプの支援により大学院在籍期間の短縮に効果があり、中でもティーチングアシスタント経験者では大学等の学術研究機関への就職が多い傾向となる等、支援の種類によってはキャリアパスの方向性への影響も示唆された。 研究後半では、人の流動に関する論理的な構造を仮定し、社会的な役割分担に関する構造化に関する考察をテーマとして追加しているが、この様な博士課程修了者(満期退学者を含む)の社会的役割を論理的な構造として捉え所属者への能動的関与についてデータ分析を実施したことは、それらを本研究のテーマである人の流動の一形態としの社会階層的流動ととらえる視点として、新規性がある。 この、あらたに比較対象とした日本国内における人材の流動に関する情報について、東南アジア地域に関する従来から収集している資料との比較の為のデータ整約がどこまで可能かについて、年度内の基礎確立に向けて分析を進めたが、具体的データを用いた記述に関しては今後の継続的課題となる。
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