研究課題/領域番号 |
15K00463
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
古賀 豊 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90282962)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | インターネット・コミュニケーション / 沈黙の螺旋 |
研究実績の概要 |
集団極化,バンドワゴン効果といった社会現象をその対象としている「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルは,今日のインターネット・コミュニケーションにおいて,まさにその有効性を持つ。本研究は,今日のコミュニケーション状況の変化を踏まえ,コンピュータ情報検索・機械学習分野で開発されてきた技法を活用することにより,このモデルの応用可能性を実証的に検証することを目的としている。 この研究課題に対し,本年度は3年計画の1年目にあたり,実施した研究内容は下記の2点である。 1. 「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルの数理的整備:まず,「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルの数理的な整備を行った。具体的には,「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルにおいて利用する閾値分布関数やそのパラメータの導出方法などの検討,さらに,「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルを応用可能とするためのコンピュータ・プログラム・コードの作成を行った。 2. インターネット・コミュニケーションのオンライン・データを取得するための手法の把握・習得と,その実際の利用:(「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルが対象とする)「沈黙の螺旋」現象がもっとも生じやすいと考えられるインターネット・コミュニケーションの実データの取得・分析を行った。具体的には,インターネット・コミュニケーションの事例として,オンライン・ショッピング・サイトでのユーザ・レビューを採り上げ,Web Scraping技術を利用したデータ取得方法の有効性の検討を行い,一定の結論を得た。さらに,その取得データに対し,topic-model / LDA (Latent Dirichlet Allocation)などのいわゆるテキスト・マイニング手法を適用し,その有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,想定した手法の有効性が確認できたことから,おおむね順調に進捗しているものと判断している。 ただし,本年度以降,本務校での仕事の激化により,本研究課題を遂行する時間が十分にとれなくなる恐れがあることが,今後の懸念材料である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究実績により,当初,想定していたWeb Scraping技術やテキスト・マイニング手法の適用可能性・有効性は確認できたことから,2年目以降には,その本格的な応用を通じて,インターネット・コミュニケーションでの社会現象を分析し,論文として発表することを予定している。 なお,初年度に,オンライン・ショッピング・サイトでのユーザ・レビューを採り上げたのは,(1)ユーザ・レビューとはある特定の商品を対象として書かれる文章であり,その対象である商品についてのほかの文章との比較分析が可能であること,(2)ソーシャル・メディアなどのほかのインターネット・コミュニケーション上のデータと比べて,比較的,文章の形式が整っており,形態素解析などの手法を適用しやすいこと,(3)ユーザ・レビューは不特定多数の読者に読まれることを前提に書かれるものであり,特定の者を想定して書かれることも多いソーシャル・メディア上のデータなどと比較して,プライバシー侵害などの危険性が少ないこと,といった理由からであるが,特に(1)の点から,非インターネット・コミュニケーションとの比較が可能となることから,これを有効に活用して,インターネット・コミュニケーションの特徴を明らかにする予定である。 さらに,オンライン・コミュニケーションの参加者の行動を把握するために,投稿間の参照関係や投稿時刻の密度などのメタ・データ的な情報の検討が必要となるが,初年度はそれが十分に行えなかったため,2年目以降はその面での検討もあわせて,実施する。 また,初年度と同様に,各種学会,研究会などに積極的に参加し,最新研究動向の把握に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度の所要額として1年間を想定して計画していたところ,本研究課題は2015年10月末に内定通知が届き,使用可能期間が実質5ヶ月しかなかったことから,当初予定額からの残額が生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じたことにより,2016年度以降は予算面で余裕ができることから,当初の計画では予算面で断念していた各種学会,研究会,イベント視察への参加を積極的に行っていく予定である。
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