集団極化,バンドワゴン効果といった社会現象をその対象としている「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルは,今日のインターネット・コミュニケーションにおいて,まさにその有効性を持つ。本研究は,今日のコミュニケーション状況の変化を踏まえ,コンピュータ情報検索・機械学習分野で開発されてきた技法を活用することにより,このモデルの応用可能性を実証的に検証することを目的とする。本研究で実施した主要な研究内容は,下記のとおりである。 (1) まず,「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルの数理的な整備を行った。具体的には,「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルにおいて利用する閾値分布関数やそのパラメータの導出方法などの検討,コンピュータ・プログラム・コードの作成を行った。 (2) 次に,(「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルが対象とする)「沈黙の螺旋」現象がもっとも生じやすいと考えられるインターネット・コミュニケーション・データに対して,各種手法の有効性の検討を行った。具体的には,インターネット・コミュニケーションの事例として,オンライン・ショッピング・サイトでのユーザ・レビューを採り上げ,Web Scraping技術やテキスト・マイニング手法の有効性の検討を行い,一定の結論を得た。 (3) 上記を踏まえた実証研究として,インターネット・コミュニケーションのオンライン・データを対象にした分析を実施した。具体的には,音楽関連出版社WEBサイトのディスク・レビューとオンライン・ショッピング・サイトでのユーザによるディスク・レビュー(ユーザ・レビュー)を対象に,両者の共通点,相違点の検出,および,それらを生み出す集合的構造要因の検討を行った。 (4) また,副次的な研究内容として,「全体状況の認知」過程を比較検討することを目的としたオープンデータ(既存大規模調査データ)を利用した二次分析も実施している。
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