|
本研究では、諸外国のアーカイブズにおける秘密情報保護と公開促進の両立をめぐる歴史的経緯とその背景を検証するとともに、国内外の各種アーカイブズ施設の実地調査に基づき、近現代資料の受け入れから公開に至る方法論の適正化と標準化を図る。
これまでの研究から、本テーマは単に文書館における保護・公開制度の現状を分析するだけでは不十分であり、記録管理及びアーカイブズのシステム全体を包括する視点から、通時的かつ領域横断的に考察する必要があることが判明した。
そこで、第二次世界大戦後のアメリカ合衆国における重要記録保護プログラムの普及に大きな役割を果たした全米記録管理評議会（NAREMCO）の活動について分析し、その成果を口頭発表および論文の形で公表した。また、戦後日本における文書管理方法論の導入と国立公文書館の設立において米国のそれが及ぼした影響について分析し、国際会議において発表した。これらの歴史的背景を踏まえつつ、欧米の秘密情報保護システムの現状について考察した論考を執筆するとともに、日本の公文書管理をめぐる課題について、シンポジウム及び雑誌寄稿において報告した。
本年度はまた、研究協力者の支援を受けながら、アーカイブズ公開システムにおいて先進的な米国、および近年この分野の改革が進む英国においてそれぞれ実地調査を実施した。米国での調査では、米国国立公文書館及び議会図書館等で資料調査を行うとともに、米国アーキビスト協会年次大会に参加して本研究課題に関する資料・情報の収集を行った。英国での調査では、ガーディアン文書館、王室文書館、グラスゴー大学文書館、ヨーク大学文書館において、当該機関の資料公開と秘密情報保護の制度及び実態に関する聞き取り調査を行った。
|
