研究課題
本年度は、先ず研究代表者の中泉が、所有権アプローチを多企業間取引に拡張した研究を行い、事前の投資水準に関するhold up問題を抑制するための多国籍企業の企業形態について理論的に示した。また、VSRPDの実験についてもパキスタンで行い、日本での既存研究との比較を行った。更に連携研究者の田中とともにファイル共有ソフトの利用が正規版に与える影響について、調査会社のウエブモニター2万人への調査を行った。個人間の異質性の制御はパネル分析を行うと、固定効果として処理できる。すなわち同じ個人を追跡すれば個人は固定されるので、もし同じ個人についてファイル供給ソフトの利用開始とともにCD購入が減っていれば被害ありと判定できる。本研究は10万人の人にサーベイを行い、半年後に再び同じ人に調査を行う事で、1回目はファイル共有を使っていなかったが2回目にはファイル共有を使っている人を抽出した。その結果、ファイル共有ソフトの利用が音楽CD売上を減らす効果はほとんど見られないことを見出した。たとえばファイル共有を利用し始めた人のうち、音楽CDの購入を止める人は11.5%であるが、これは音楽CDの購入を止める人の全体の比率44%よりずっと低い。すなわち、なにもしなくても音楽CDの購入を止める人が44%程度いるのに対し、ファイル共有を始めた人ではこの比率が11.5%と低く、相対的にはより音楽CDを購入し続けている。その結果、ファイル共有を始めた人の音楽CD平均購入枚数は月に2.61枚から4.52枚に増えている。ファイル共有が音楽CDの売上を減らす効果は見られない。このような非常に興味深い結論を得ることができた。
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