研究課題/領域番号 |
15K00479
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
綿抜 豊昭 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (30211676)
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研究分担者 |
真栄城 哲也 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (30361356)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自然観察会 / 行動モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,共同体験型自然観察会用学習支援システムを構築し,参加者の行動と観察内容を解析する方法を確立することである.具体的な研究内容として,参加者が身に付けるライフログ装置によって取得される画像データおよび位置データから観察対象および観察時の行動を解析し,それらの情報を記述する方法,これらの解析結果に基づいて観察記録を生成する方法,そして体験記録を作成する方法がある.前年度に実施した予備実験で検証したGPS装置と画像データの同期や解析方法を用いて,20名とその保護者が参加した自然観察会をのべ2回実施し,データを計測した.このデータを用いて,参加者の位置関係の計算および移動状況の可視化,そして画像データと連動した可視化を行なった.このデータから,参加者とその保護者の行動パターンが解析できた.特に参加者同士が集まって行動するパターン,保護者と一緒に行動するパターン,保護者と離れているがゆるく一緒に行動するパターン等を検出し,これらの行動パターンと観察対象物の関係を解析した.中でも,同一場所にいても,同一対象物を観察する場合と,そのような観察対象の共有がない場合で解析を実施した.また,複数の観察者が同一対象物を見るが,それは複数の視点から捉えることと同等である.異なる視点で対象物を記述できるモデルを提案し,参加者の行動パターンと観察対象の関係を記述した.この記述には,参加者間の関係や対象物を捉える複数の視点が含まれる.また,参加者間の関係性や対象物を捉える視点は,観察会を通して不変ではなく,時系列で変化する.さらには,同一対象物の捉え方でも,観察者または参加者群の構成によっても変化する.従って,観察会は1つの視点に基づく記述では不十分となる.観察会のデータを用いて提案モデルの有効性が検証できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでよりも高精度な動画データおよび位置座標データを計測できる装置を用いて自然観察会のデータを計測した.動画データについては,フレーム数,解像度ともにより高くなっており,動画から1フレームの画像を抽出しても静止画として解析に耐え得る画質が得られた.このことにより,時系列に基づく解析がより高速に実行できるようになる.この解析アルゴリズムを検討した.また,観察対象を多視点で記述するためのモデルを用いて計測データを記述および解析した.さらには,これまでに実施した自然観察会から得られた計測データを用いて参加者の位置関係の計算および移動状況の可視化,そして画像データと連動した可視化のためのシステムを開発し,解析システムを組込み,解析結果を統合して表示する手法の開発を始めた.このシステムは,提案済の多視点を統合的に記述できるモデルを用いており,自然観察会のデータに参加者および対象物毎を多視点で捉える記述と解析結果を重ねて表示する機能を備えている.このシステムを用いて,自然観察会のデータを任意の視点に応じて表示することが可能となる.
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今後の研究の推進方策 |
新たに確立した動画データおよび位置座標データの計測装置を用いて自然観察会を実施し,計測データを増やす.これらのデータはより精度が高いため,より高精度な位置関係や移動状況の計算が可能となり,それに応じてデータの解析および可視化方法を改良する.また,提案した記述モデルを用いて観察内容を記述を引き続き実施する.さらには,記述モデルで利用可能な主に時系列に関わる要素の影響を解析する手法を応用し,自然観察会のデータで参加者の行動と観察対象との関係性に着目した解析について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで得られた実験データを解析したところ,GPSによる移動データとカメラから取得される動画データをどちらも複数の機器から取得したデータを統合することで,より詳細な参加者の行動の相互作用関係が抽出できる可能性を見出した.その実証のため,複数データを統合する解析システムの開発とその評価のための自然観察会を実施する.また,より高精度のデータが取得でき,それに対応した機能を解析および可視化システムに組込む必要が生じた.自然観察会の実施のための旅費,データ解析の実施費および成果発表のための旅費の使用を計画している.
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