研究課題/領域番号 |
15K00488
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
大久保 弘崇 愛知県立大学, 情報科学部, 講師 (40295580)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | e-ラーニング / プログラミング教育 / 自動判定 / 関数型言語 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、プログラミング教育の演習課題をEラーニングシステム上で自動的に実施する際の障害を解決し、学習効果を高めるために必要な機構を実現することである。この目的に対する具体的な第一の課題として、答案に対する正誤の判定機能の開発に注力した。判定はランダムテストを基盤にして行う。 これまでの予備研究において作成した演習問題データに蓄積された知見を集約し、正誤判定の機能をまとめたフレームワークにするべく検討を進めた。また、出題した演習問題に対する学生からの多量の答案データについても分析を進めた。これらから得た知見として、出題者が問題と共に作成する正解判定記述において、意図しない解答を抑制するためのパターンカタログ的なノウハウの抽出が必要であることを確認し、その文書化を開始した。また、ランダムな入力データの生成機構について、基盤にしているQuickCheckが提供している、ソフトウェアテストを目的としたストレートな乱数生成器だけでは正解判定記述の作成が困難であり、より正解判定という目的に沿ったランダムデータ生成機構もまたカタログ的に提供する必要があるという知見を得た。これらの知見は、本研究が実現するEラーニングシステムに対するコンテンツとして、利用者である出題者が演習問題データを効果的に、かつまた別の利用者である学習者の学習効果が最大限得られるように作成するために不可欠といえる。 また、本年度の講義実施により、さらに追加で演習問題を作成し、答案データが収集された。 他に、次年度の目標に設定していた答案の分類機構について、コンパイラのエラーメッセージに基づく方法、答案プログラムの入出力関係に基づく方法の二案の研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画で本年度の目標とした正誤判定機能を集約したフレームワークの開発に関して、最終的な目標である、開発言語におけるモジュールの形での機能抽出は達成できていないが、フレームワークが持つべき機能は、ランダムデータ生成機構のカタログ的な提供、出題者の意図しない解答を抑制する正解判定を記述しやすくするための支援機能について、当初計画よりも大きく強化する必要があると判り、その知見の整理を開始した。また、中心的な機能である正解判定記述を正確かつ容易にするために必要な機能についても、これまでに蓄積された出題データから充分に得られている。 さらに、次年度の目標である答案の分類機構について、先行して研究を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究実施計画に基づき、研究を推進する。 フレームワークのモジュール化を進めるため、モジュールが提供するべき機能の実装を順次進める。平成28年度の中心的な目標である答案の分類機構について、平成27年度の先行研究を踏まえてさらに推進する。 また新たに、初心者にとって、答案プログラムがコンパイルエラーで実行できないことと、実行時のエラーになることの区別が困難な状況があることが観察された。言語の意味論を変更し、通常の言語処理系ではコンパイルエラーになるようなプログラムであっても、この段階の学習者の理解モデルでは(コンパイルエラーの原因である誤りに達するまでは)実行が行えるような言語処理系を開発できれば、正誤判定におけるエラー報告がより理解しやすいものにできると期待される。このような言語処理系の実現が可能かについて、検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報交換のための学会参加が都合がつかず実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は次年度の予定額の3%であり、計画に変更が生じる程の影響はない。
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