平成29年度は,27年度に開発した論文を対象とした観点に基づく知識の階層構造化支援システム,それをベースとした28年度の各領域(プログラミング,論理,数学)における知識構造の構築支援システムを発展させ,より高度な知識の構造化支援システムを開発した.特に,プログラミング領域および数学の領域において発展させ,システムの開発および実践を行い,それを国際会議や学術論文として発表できた. オブジェクト指向プログラミングなどにおけるシステム設計においては,機能の階層的整理が重要であり,この実現のためにはボトムとして活用できるプログラミングのためのコードのまとまり(以下部品と呼称)の獲得が重要である.本年度は,この部品について段階的に拡張する手法について提案し,その学習支援システムを開発し,実験を通して効果を確認し,国際会議,学術論文として発表した.さらに,部品の構造化のために処理,振る舞い,機能の3観点でプログラムを定義し,複数観点を視野に入れた構造化のためのモデルを提案した.また,プログラムの振る舞いそのものがわからない人に関しては,振る舞いをトレースさせ,その実行結果を確認させるシステムも補助的に開発,実験を行い,同様に国際会議,学術論文として発表した. 数学の領域においては,数学における表現である,記号的表現(数式などの文字を用いた表現,一般的な解法に相当)と,図形的表現(解法に対応した図)についての理解を促進するために,両表現の相互変換機能を有するシステムを開発し,両表現の関連付けを支援するシステムを開発した.これについても実験を通して評価を行い,国際会議,学術論文として発表した.これは,通常の数学学習においては解法のみ構築できていれば正解となるが,熟達者は自身の表現した文や数式の意味を深く理解しており,図的に表現できることから,初学者をこのレベルに誘導しようとした試みである.
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