研究課題/領域番号 |
15K00499
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
西口 敏司 大阪工業大学, 情報科学部, 准教授 (80362565)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遠隔講義 / ロボットアバター / 双方向コミュニケーション |
研究実績の概要 |
一般的な遠隔講義システムでは,講義を行う講師をカメラで撮影し,その映像を受講者が存在する講義室のスクリーンに投影する.このとき,講師は受講者を俯瞰的に撮影した映像を見ながら講義を行うことになるが,受講者にとっては講師の存在感が低く,講師にとっては遠隔地の講義室に対する臨場感が低いため,受講者の状況に応じた効果的な遠隔講義が困難であるという問題がある.そこで本研究課題では,これらの存在感や臨場感を高めるために,講師アバター(分身)を講義室に配置する状況を考え,受講者の状況に応じた効果的な遠隔講義を実現する際に必要となる,遠隔地間の講師と受講者の間の双方向コミュニケーションモデルの構築を目指している. 平成27年度は,遠隔講義のための双方向コミュニケーションモデルを実証するためのプラットホームを構築するために,遠隔講義のための講師ロボットアバターのベースシステムの構築を行った.このシステムは,講義室内を移動するための車輪,講義室の地図を生成するためのレーザレンジファインダ,周囲の状況を把握するための深度センサと全天球カメラ,及び,講師の表情などを伝えるためのモニタを備える.車輪とレーザレンジファインダ,深度センサの制御にはRobot Operating System(ROS)を利用し,全天球カメラとモニタの制御にはWindows OSを利用している.講師側のシステムとしては,全天球カメラの映像を表示するための没入型ヘッドマウントディスプレイを利用し,講師ロボットアバターに搭載した全天球カメラで撮影した全天球映像を講師に提示する枠組みを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,遠隔地の講師と講義室の間で実施する遠隔講義において,遠隔講義のための双方向コミュニケーションモデルの構築を目指している.このとき,講師の分身として講義室に配置する講師ロボットアバターの機能と講義を行う遠隔地の講師への提示機能を実現するためのベースシステムの構築が必要となる. ベースシステムとして構築した講師ロボットアバターは,講義室内で机間巡視をするための移動用車輪を備えている.また,遠隔地の講師にはわかりにくい講義室内の構成を把握するためのレーザレンジファインダを装備している.このセンサは,講義室内の移動可能領域を表す地図を生成するために利用する.さらに,レーザレンジファインダで得られる平面地図に加え,より詳細な三次元空間地図を作成するための深度センサを搭載している.講師ロボットアバター視点のあらゆる方向の講義室の様子を映像化して遠隔地の講師に伝えるための全天球カメラを装備している.さらに,講義を行う講師の様子を講義室に伝えるため,座って授業を受ける受講者目線の高さにモニタを設置し,映像アバタを表示可能とした. 講義を行う遠隔地の講師に講義室内の状況を提示するために,講師ロボットアバターに搭載した全天球カメラ映像を提示するための没入型ヘッドマウントディスプレイを導入した.これにより,遠隔地で講義を行う講師が講義室空間に居るかのような臨場感を得ることが可能となる. 以上から,本研究課題での実現を目指す,遠隔講義のための双方向コミュニケーションモデルの構築の実現に必要な講師ロボットアバターに関する基本的な機能は構築できている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策としては,より効果的な遠隔講義の実現のための「受講者空間と講師空間の間の双方向コミュニケーションモデルの構築」を目指し,遠隔講義を,講師ロボットアバターを介した遠隔地の講師と講義室内の受講者の間の「遠隔地間の双方向コミュニケーション」という観点で捉え,講義室内の受講者の観測データからどのような情報を獲得して講師に提示すればよいか,及び,講師のどのような身振りや仕草について,講師ロボットアバターを介して受講者に伝えればよいかについて検討し,モデル化していく. このとき,遠隔地の講師が違和感なく遠隔講義を行うことを可能とするために,講師の自然な行動によって,講師ロボットアバターを制御することができる仕組みについて検討する.この実現のために,講師の様子を獲得するためのセンサを追加する.講義を行う講師の動作としては,移動,スクリーンへの指示,スライド資料への指示,発話,視線を向けることなどが挙げられる.これらの情報を獲得するための深度センサなどを利用する. さらに,講義室においてロボットアバターを介して受講者が感じる講師の存在感の向上と,講師が没入型ヘッドマウントディスプレイ上に可視化された受講者空間の映像を見ることによって感じる講義室に対する臨場感を高めるための情報について検討する.このために,講師ロボットアバターに,ネットワークを介して情報伝達する機能を追加し,受講者空間と講師空間の間の双方向コミュニケーションモデルの構築を進める. また,効果的な遠隔講義のための双方向コミュニケーションモデルの有効性を評価する方法について検討し,総合評価にむけての検討を開始する.得られた検討結果について,講師ロボットアバターの機能にフィードバックしつつ,より効果的な双方向コミュニケーションモデルを改良していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として,情報収集や成果発表のために参加を予定していたいくつかの学会について,スケジュールの都合により,参加できなかったり,参加日数を短くしたりしたことなどが挙げられる.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については,本研究課題に関連する最新の研究に関する情報収集を行うために関連学会への参加,及び,これまでの研究成果を発表するための参加費と旅費として使用する.
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