一般的な遠隔講義システムでは,講義を行う講師をカメラで撮影し,その映像を受講者が存在する講義室のスクリーンに投影する.このとき,講師は受講者を俯瞰的に撮影した映像を見ながら講義を行うことになるが,受講者にとっては講師の存在感が低く,講師にとっては遠隔地の講義室に対する臨場感が低いため,受講者の状況に応じた効果的な遠隔講義が困難であるという問題がある.そこで本研究課題では,これらの存在感や臨場感を高めるために,講師アバター(分身)を講義室に配置する状況を考え,受講者の状況に応じた効果的な遠隔講義を実現する際に必要となる,遠隔地間の講師と受講者の間の双方向コミュニケーションモデルを構築した. 平成29年度は,これまでに開発した遠隔講義のための双方向コミュニケーションモデルを実証するためのプラットホームである,遠隔講義のための講師ロボットアバターのベースシステム上の全天球カメラを利用した任意視点映像の生成と,授業状況の分析手法の構築を行った.任意視点映像の生成では,空間に設置した複数視点からの全天球映像から,その中間視点での映像を生成することで,遠隔地の講義室における仮想的な移動を可能とした.また,授業状況の分析では,ロボットの周囲の状況を把握し,これを遠隔地の講師に伝達するために,講義室に配置した講師ロボットに搭載した全天球カメラで全周囲を撮影した映像に映った複数の受講者に対して,正面を見ている,頬杖をついている,俯いている,手を挙げているなどの状況を姿勢検出技術によって推定する仕組みを構築した.
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