研究課題/領域番号 |
15K00510
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
水口 充 京都産業大学, コンピュータ理工学部, 教授 (60415859)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エンタテインメントコンピューティング / エンタテインメント性 / 偶然 / 演出効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はエンタテインメントコンピューティングにおける偶然性の役割を分析・調査し、新たな応用を模索し切り拓くことにある。そのために1.演出装置の開発、2.期待感と信頼度の調査、3.偶然を扱うアプリケーションの開発の3項目について、平成28年度は下記の研究開発を行った。 1.クルーンと呼ばれるルーレット様の抽選装置を作成した。この抽選装置は複数の穴を有する中央部が凹んだ皿状の円盤にボールを投入し、ボールの入った穴で抽選結果を決めるものである。ボールが穴に入るまでに時間を要し、また穴に差し掛かった際に軌道が変化するという特性のため、抽選過程が遊戯者に変動する期待感を与えるというエンタテインメント性を持っている。この装置に、ボールの動きをカメラでトラッキングし、ボールの位置および軌跡に応じて効果音を再生する演出を付与することでエンタテインメント性を高めることができた。 2.昨年度作成したARダイスタワーに数当てゲームを実装し演出の影響を調査した。ARダイスタワーは遊戯者が見ても瞬時には出目が分からないような類似したマーカを各面に配したサイコロを振り、カメラで撮影してゲームにおける結果に応じた演出によって遊戯者に結果の善し悪しを思案させることでエンタテインメント性を高めるものである。この演出と結果の対応関係について、相関を持たせたものと無相関のものとで比較した結果、遊戯者は相関の有無に気付くことができ、相関がある方が結果に対する期待感が高まることが分かった。 3.プログラミングを題材としたプログラミングゲームおよびカードゲームを制作した。ゲームにおける偶然性の効用を検討するため、前者は偶然性を排除する設計とし、後者は偶然性を採り入れプレイヤはカードの出現確率も勘案してプレイすることが要求される設計とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
演出装置の開発については、当初の計画どおりクルーンを用いた抽選装置を作成し、抽選過程を演出する手法を提案することができた。作成を通じて、適度な盤面の傾斜や穴の位置・大きさ、ボールの素材、投入方法といったノウハウが得られた。演出については、現段階ではカメラに影響しないよう映像を用いず音のみを使用しているが、クルーン盤面以外に投影する方法や赤外線ライトとカメラを使用して投影映像の影響を受けずにトラッキングする方法が考えられる。 期待感と信頼度の調査については、偶然の結果を予感させる演出の効果について予備実験的ながら効果の存在を確認することができた。演出の効果は出現確率や相関度によって変化することが予想される。更なる調査に向けて、要因の分析と実験方法を検討している。 偶然を扱うアプリケーションの開発については、偶然性の感じ方や演出の付与を応用するためのテスト環境として使用できるアプリケーションを作成することができた。 以上のように、本年度の研究実施計画に対しておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は1.演出装置の開発、2.期待感と信頼度の調査、3.偶然を扱うアプリケーションの開発の3項目について以下のように進める。 1.演出装置の開発については、平成28年度に作成した装置を改良してアプリケーション開発に利用する。改良項目としては、期待感を遊戯者が十分に感じられる程度の抽選時間を確保するためにボールの投入口を設置する、光や映像による抽選過程の演出を追加する、アプリケーションの内容に応じて円盤と抽選結果となる穴の形状を再設計する、を計画している。 2.期待感と信頼度の調査については、まず抽選結果によるプレイヤの利益と出現確率、結果に対する演出の出現確率、信頼性、強度といったパラメータと、プレイヤの感じる期待感や幸運感といったエンタテインメント性の関係をモデル化する。評価用アプリケーション(スロットマシーン的なゲームを想定)を作成し、主要と考えられるパラメータを優先してモデルの検証を行う。 3.偶然を扱うアプリケーションの開発については、平成28年度に作成した抽選装置を使用したゲームアプリケーションを開発し演出の効果を評価する。また、カードゲームについてカードの出現確率を分析しゲームバランスを調整するツールを検討・開発する。
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