研究課題
我が国において、鉛、ヒ素についで3番目に広域な土壌を汚染している重金属クロム(総クロムと六価クロム)汚染の実態解明と環境動態、生態影響を明らかにすることを目的とし、研究を遂行した。実施期間内には、とくに東京都江戸川区・江東区の旧化学工場跡および、埋め立て処分された公園での調査にくわえ、各種生態系(北太平洋の海生生物や本州の哺乳類など)での分布把握を中心に分析を行った。東京都の汚染地に関して、江戸川区では汚染源となる地点の推定が行われた。そして、現在も漏出が続くメカニズムを、pHや酸化還元電位、水温、さらに各種気象データを用いて解析した。その結果、61から90日前における1時間降水量の最大値が高いほど,また過去90日間の合計降水量が多いほど,滞留水中のCr(VI)濃度は高くなるメカニズムが明らかとなった。さらに、六価クロムは地下水中を移動する間に不溶性である三価クロムへ徐々に還元されることも明らかとなった。つまり、雨水ます内に流入した六価クロムは滞留水から堆積物へ移行するとき,堆積物が低pHかつ低Ehなら3価態として,堆積物が高pHかつ高Ehであると6価態として堆積物へ移行する.しかし、六価クロムは堆積物中では還元されやすいため,時間と共に三価へ還元されるメカニズムが推測されたここで、近年の異常な豪雨に伴い路面に黄色い結晶が析出する事態を引き起こしている。我々の分析はその結晶が高濃度の六価クロムであることを明らかにした。さらに、六価クロムの溢れ出しにも地理的な特徴が存在し、汚染源に近い路面ほど高くなること、一旦漏出した後は勾配に従い、特定の場所に集積するメカニズムが明らかとなった。このことは、各種気象に伴い、新たな汚染が地上に現出すること、さらにホット・スポット形成に加え、乾燥・飛散により地域住民や生態系へも被害をもたらす可能性を示唆し、今後の研究が必要であることを示した。
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