研究課題/領域番号 |
15K00527
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山根 省三 同志社大学, 理工学部, 准教授 (10373466)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 局地風 / 京阪奈地域 / 海風 |
研究実績の概要 |
気象庁地域気象観測システム(AMeDAS)の10分毎のデータと国立環境研究所でアーカイブされている大気汚染状況常時監視の1時間毎のデータを用いて、京阪奈地域を中心とする関西エリアの暖候期静穏日の局地風の特徴を地域を分けて調べた。その結果、大阪湾からの海風が生駒山地の北側を通って京阪奈地域(枚方や京田辺)に到達する日は、大阪の都市域よりも京阪奈地域の方が日最高気温が高くなる傾向があることが分かった。また、海風が生駒山地の南側を通って奈良盆地内に侵入する日も盆地内の日最高気温は高い傾向があった。奈良盆地内の気温が日最高となる時刻が、海風の侵入する日の方がその他の静穏日よりも早かったことから、盆地内が高温となったことで海風が盆地内に侵入し、その海風により盆地内に冷気がもたらされたと解釈される。関西エリアの各地の海風の侵入時刻や侵入頻度は、過去40年のデータの中で変化が見られた。大阪平野の都市化がこの変化の主な原因と考えられるが、その変化の実態を理解するには、大阪平野全体の夜間の陸風や局所的な都市部のヒートアイランド循環を含めて、大阪平野の地上風の日変化の経年変動を調べる必要があると考えられた。 大気汚染物質濃度データの解析からは、大阪湾からの海風が卓越する暖候期静穏日の午後に大阪府北東域で光化学オキシダント濃度が高くなる傾向があることが分かった。また、この海風の風速が強い日よりも弱い日の方が大阪府の光化学オキシダント濃度が高くなる傾向があった。光化学オキシダント濃度が特に高くなる日は、午前の早い時間帯から通常よりも濃度が高いことが多く、海風で大阪平野に運ばれてくる空気の履歴もその後の濃度変化にとって重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、京阪奈地域の暖候期静穏日に発達する局地循環の特徴を明らかにすることを目的としている。初年度は、気象庁地域気象観測システム(AMeDAS)の10分毎のデータと国立環境研究所でアーカイブされている大気汚染状況常時監視の1時間毎のデータを用いて、大阪湾からの海風が内陸に進行する様子と、それが京阪奈地域の気温や光化学オキシダント濃度の日変化に及ぼす影響を中心に解析を行なった。また、奈良盆地の暖候期静穏日の地上風と気温の日変化の特徴や奈良盆地と大阪平野、京都盆地との間の空気移動の日変化についても調べた。使用データの整備に当初の予定よりも時間がかかったが、現在では、地上気象観測データを使って京阪奈地域の局地循環に関連する局地風の解析を順次進めていける状況にある。このデータ解析環境の構築により、今後、予定通りに研究を発展させる(気象庁メソモデル解析値のデータ解析や領域大気モデルによる数値実験による研究)ことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、気象庁地域気象観測システム(AMeDAS)の10分毎のデータと国立環境研究所でアーカイブされている大気汚染状況常時監視の1時間毎のデータに加えて、気象庁メソモデルのモデル面解析値(メソ解析値)を用いて、上空の風の循環を含めて局地風の特徴を調べる。メソ解析値は、気象庁メソ数値予報の初期値として用いられるものであり、水平格子間隔約5km、鉛直50層、3時間毎のデータである。解析値は観測データと数値モデルを組み合わせて作られたものであり、特に小規模の現象においては、純粋な観測値とは決定的に異なることに注意する必要がある。このデータを用いて、大阪湾から進入する海風の高さや盆地の谷風に伴う鉛直循環などを調べ、個々の局地風が顕熱、水蒸気、大気汚染物質をどの程度、鉛直方向に混合、輸送、拡散するかを実際の観測データとつき合わせながら調べる。また、データの解像度から定量的な調査は困難であると考えられるが、このデータを用いて大阪や京都のヒートアイランド循環についても解析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国内学会への出張をとりやめたことと、計算環境の構築や気象データの整備として計上していた人件費を抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
気象データを保存・処理するコンピュータ機器の購入、及び、学会参加に必要な旅費に使用する計画である。
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