時空間を動きまわる希少で微小な大気エアロゾル粒子の実体 (量,大きさ,組成,形) 把握は難しい.エアロゾルが健康・環境・社会に与える影響の大きさが認識され,衛星および地上計測・実験・理論・モデルを駆使した研究調査が始まった.特に越境大気汚染(黄砂粒子・PM2.5)問題を抱える我が国では大気エアロゾル解析は緊急課題である.しかし大気エアロゾル特性の高精度把握や雲との相互作用を含めた放射収支に与える不確定性は未解決のままである.本研究は衛星で取得される多波長・偏光データを基盤情報として地上計測データやシミュレーション情報を複合活用した精密で効率的な大気エアロゾル・リトリーバル手法を開発し,実効的なシステムを構築する事を目的とした.次に,3年間の成果・達成度・今後の発展計画をまとめる: ①効率的なエアロゾルモデル表記を提案し,広くMODISやADEOS-2/GLIデータに適用し,計算効率だけではなく精度面でも十分な結果が得られる事を実証した.②偏光放射伝達モデルの実用化精度向上に努めた.更に,偏光・非偏光両放射場に柔軟に対応可能なシステムへの移行に着手した.③近紫外並びに紫バンドデータ比で定義する指標(AAI: Absorption Aerosol Index)を提案,この指標を用いてエアロゾルを鉱物粒子,植物燃焼粒子,硫酸粒子,雲に大別できる事をADEOS-2/GLI全球データを用いて示した.④大気汚染やPM粒子解析,地域気象影響評価等に応用した.⑤衛星データ検証ツールをNASA/AERONETデータを基に作成した.4つの選定ルールを提案し,各項目に3段階評価を付して目的に応じた衛星プロダクツ検証に非常に有用である事を示した. ⑥本研究成果は,2014年10月に打ち上げられたひまわり8号やJAXA/GCOM-C(しきさい)搭載SGLIセンサデータ解析に活用予定である.
|