研究課題/領域番号 |
15K00534
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
若杉 光生 金沢大学, 薬学系, 助教 (80345595)
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研究分担者 |
松永 司 金沢大学, 薬学系, 教授 (60192340)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヌクレオチド除去修復 / DNA損傷応答 / 二次的DNA損傷 |
研究実績の概要 |
今年度は、紫外線による塩基損傷がDSBやssDNA等の二次的なDNA損傷に変換されるメカニズムの解明と、生体内での二次的DNA損傷の生成の意義を明らかにすることを目的として実験を行い、以下のような成果を得た。 1. 昨年度の解析で二次的DNA損傷への変換に関与することが示唆されたExo1を中心に解析を行った。まず、蛍光タンパク質と融合したExo1を安定発現する細胞を作成して細胞内局在性について検討したところ、NERの切断反応に依存して紫外線損傷部位に集積することがわかった。次にDNA損傷応答反応について調べてみると、Exo1を過剰発現した細胞では親株と比較してATR及びATMの共通の基質であるH2AXのリン酸化反応が顕著に亢進しており、NERにより生じたssDNA領域が拡大していることを示唆する結果も得られた。一方でDSBに依存して活性化するATM経路について調べると、その活性化は抑制されていた。つまり、Exo1によるssDNA領域の拡大はATRシグナリング経路を促進させるが、DSBの生成もしくはATMシグナリング経路を抑制することがわかった。 2. 昨年度のH2AXのリン酸化反応の解析に続き、マウスの皮膚組織におけるATMシグナリング経路の活性化について検討を行った。UV-Bを照射した野生型マウスの基底層の細胞では4時間後に強いATMのリン酸化のシグナルが観察されたが、24時間後では減衰しており、H2AXのリン酸化反応とは明らかに異なる動態を示した。それに対し、NER能を完全に欠損したxpaノックアウトマウスではどの時間においてもそのシグナルはほとんど検出されなかった。したがって、皮膚組織においてもATMのリン酸化がNER依存的に生じることが明らかとなり、紫外線によってDSBが生じる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画を遂行する上で鍵となるのが、着目するDNA損傷応答を活性化する二次的DNA損傷生成機構の解明にある。それはNERによってDNA損傷が除去された後に生じたssDNAギャップ中間体が、エンドもしくはエキソヌクレアーゼ等によるプロセシングを経てDSBを生成する可能性が高く、その酵素の同定が極めて重要である。その解析には休止期細胞へのsiRNAや外来遺伝子の導入が必要であり、本年度のレンチウィルス系の導入条件の至適化によりある程度効率的に目的の遺伝子をノックダウンすることが可能になった。しかし、一過性にレンチウィルスを導入すると、解析対象であるATMシグナリング経路が一時的に抑制されるということが判明した。そのため表現型の解析には安定導入細胞を樹立することが必要となり、細胞の樹立にある程度時間を要することが実験の遅れの原因となっている。また生存に必須な遺伝子あるいは増殖に必要な遺伝子をノックダウンする場合には、十分に抑制された細胞を得ることが難しいという問題も生じており、条件的ノックダウン系の導入も必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の最重要課題として、NERによってDNA損傷が除去された後に生じたssDNAギャップ中間体に作用する酵素の同定がある。その解析には、前述したように休止期細胞へのsiRNAや外来遺伝子の導入が必須だが、今年度行ったレンチウィルスを用いたshRNA系の実験条件の最適化により、ある程度効率的なノックダウン系を確立することができた。しかし、レンチウィルスの導入によって一時的にATMのシグナリング経路が抑制されてしまうことがわかったので、解析対象が細胞の生存や増殖に必須の遺伝子の場合には条件的ノックダウン系を導入して検討を行う。また、これまでのように関与が予想される酵素に絞って解析するだけではなく、ゲノムワイドなsiRNAライブラリーや質量分析を利用した網羅的な解析を利用する等のアプローチも必要と考えられるので、今年度から始めた共同研究等を利用してより積極的にその機構解明に全力を注ぐ。そしてその候補を同定できた場合、その活性の制御機構や、それを欠損した時の紫外線やNERの基質となるDNA傷害剤の影響について、細胞レベルそして個体へと解析を展開していく。 一方、今年度の解析により皮膚組織においても、NER依存的な二次的DNA損傷の形成を示唆する結果が得られたので、さらに詳細な検討を進めていく。そしてNERの基質となるシスプラチン等の化学物質を投与した時の反応についても非常に興味が持たれるので、個体レベルでの反応について検討を続けていく。
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