紫外線による塩基損傷がDSBやssDNA等の二次的なDNA損傷に変換されるメカニズムの解明と、生体内での二次的DNA損傷の生成の意義を明らかにすることを目的として実験を行い、以下のような成果を得た。 1. 二次的DNA損傷に変換されるメカニズムとして、ヌクレオチド除去修復(Nucleotide excision repair; NER)反応の一本鎖DNA(single-strand DNA; ssDNA)ギャップ中間体から拡大されたssDNA領域が生成し、Exonuclease 1(Exo1)がこの過程に関与する可能性が考えられた。そこで、過剰発現系とノックダウン系を用いてその可能性を検討し、Exo1に依存してssDNA領域が拡大されること、それによりATR経路が活性化することを明らかにした。また、Exo1がDNA二本鎖切断に対するシグナリング経路にも影響を与えることや、細胞死の防御に寄与することを示した。もう一方のDSBに関しては明確な答えが得られたなかったものの、紫外線によるDNA損傷がssDNAに変換されるメカニズムを明らかにし、NER中間体のプロセッシングが生物学的にも重要であることを示唆した。 2. 野生型マウスとNER能を欠損したxpaノックアウトマウスにUV-B紫外線を照射し、皮膚組織における諸反応について解析を行った。その結果、野生型マウスでは、表皮の組織幹細胞である基底細胞層においてKi-67陰性細胞でもヒストンH2AXやATMのリン酸化が生じ、これらの反応はxpaノックアウトマウスでは見られないことを明らかにした。興味深いことに、両者のリン酸化のタイムコースが異なることから、ATRの活性化も示唆された。以上の結果は、生体内でもNER依存的に二次的DNA損傷が生成していることを意味しており、今後の研究で発がんを含めた生物影響について詳細に検討する必要がある。
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