研究課題
低線量放射線照射により生じたラジカルやDNA 鎖切断が惹起する細胞環境、レドックスやミトコンドリア動態などがもたらす細胞内応答について、質量分析を用いた代謝物差分スクリーニングや分子標的プローブを用いた蛍光イメージングを併用した多モード解析により放射線誘発された細胞内/外環境調節を多面的に明らかにすることが本研究の目的である。初年度は、ヒト繊維芽細胞を用いて分子標的蛍光プローブ(dichlorofluorescein, Liperfluo,Rhodamine1-2-3, MitoRed, BCECF)染色の最適化および、蛍光顕微鏡観察条件の最適化を行った。また、DNA損傷応答から代謝調節へとつながるシグナル分子群の関与を解析するため、ATM遺伝子などを標的としたshRNA発現レトロウイルスベクターを作成してヒト繊維芽細胞に導入し、RNA/タンパク質レベルで発現減少を確認した。また、酸素分圧を4%に下げる、あるいは高・低グルコース条件で培養し放射線照射した繊維芽細胞のメタボローム解析も行い、細胞内代謝分子の変動が低線量放射線応答を変化させる可能性について検討を行った。メタボローム解析系については、従前に報告した分析法よりも多検体解析に適した親水クロマトグラフィー高速分析系を作成し、分子データベースを再構築している。脂溶性分子に適した逆相クロマトグラフィー分析系も構築し、分子データベースを作成中である。また、エクソソームに含まれるタンパク質の質量分析法の確立については現在進行中である。
3: やや遅れている
初年度は11月開始であったため、当初の実験計画の遂行が時間的に困難であった。
今年度は昨年度完遂できなかった研究計画書に記載の項目について、照射細胞を用いた解析を順次行う。脂質やミトコンドリア分子などの標的蛍光プローブを用いた放射線照射細胞の動態追跡については、設定した測定条件で解析をしながら、同一の条件を用いた代謝物追跡も行い動態との相関を調べる。shRNAによるノックダウン細胞については、放射線照射による代謝物変動解析を行う。本年度はDSB のライブセルイメージング系を作成し、DSBと細胞応答の相関について蛍光プローブ及びメタボローム解析により検討を行う。またエクソソームプロテオミクスは本年度中の確立を試みる。
研究開始が11月からであったため、計画の遂行に十分な時間が確保できなかったから。
前年度の未達の研究計画に加え、今年度予定している計画を遂行するために使用する予定である。
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