研究課題
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は悪性脳腫瘍や頭頚部がんなどの難治性がんに対して有効な放射線治療法とされる。近年、原子炉を必要とせずkeVオーダーの低エネルギーで、かつ単位面積当たりの中性子数も多い加速器を用いた中性子場の開発が進められている。この加速器を用いたBNCTでは、すでに測定された深部量百分率の経時的変化を検証することが重要である。加速器BNCTにおける放射線照射場のガンマ線、熱中性子線、熱外中性子線、高速中性子線の放射線混合場で各放射線由来の組織吸収線量を分離して測定し、放射線混合場の線質を評価することを可能とするリアルタイム線量モニタシステムが必要とされている。本研究では、リアルタイム線量モニタシステムを構築するために、熱外中性子線の線量を高精度に測定する熱外中性子線用電離箱検出器を開発する。これまでに熱外中性子線測定用電離箱の壁材にはホウ素を混入した検出器が用いられてきたが,新たに見出した加工性が高いホウ素入り素材により電離箱検出器を試作した。放射線医学総合研究所低線量棟のタンデム型ダイナミトロン(HVEE):NASBEEを用いて測定実験を行った。リアルタイム線量モニタシステムを検討するために,熱外中性子線用電離箱,グラファイト壁電離箱,ボロン入り電離箱、組織等価型電離箱をポリエチレンファントム内に同時に配置して深さ別に繰り返し測定した。同一条件による測定の再現性は5%以内で良好であることが判った.また,金箔法による中性子線束の測定結果から,応答感度は,熱中性子線に対して2.23×10-7±17% pC・cm2,熱外中性子線に対して2.00×10-5±6% pC・cm2の値が得られた.開発した熱外中性子線用電離箱は熱外中性子線に対して十分な感度を有し,金放射化法を併用することにより熱中性子線と熱外中性子線の分離測定が可能であることが明らかになった.
すべて 2017
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Radiat Environ Biophys
巻: 56 ページ: 269 276
10.1007/s00411-017-0700-y