研究課題/領域番号 |
15K00546
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
松井 理 金沢医科大学, 医学部, 助教 (60288272)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プレクチン / DNA損傷応答 |
研究実績の概要 |
DNA二重鎖切断誘発後、ATMによってリン酸化される新規標的蛋白質として申請者が見出したプレクチンについて、そのリン酸化の生理的意義とDNA損傷応答における機能的役割を明らかにするため、以下について調べた。 申請者は、これまでに共焦点レーザー顕微鏡での観察により、主に細胞質内で接着分子として働いているプレクチンの一部が核内に局在していることを明らかにしたが、そのことをさらに詳しく検証するために、細胞分画法によりプレクチンの細胞内局在について調べたところ、そのほとんどが既知の通り細胞骨格を含む不溶性画分に局在している一方、一部が核内の可溶性画分(核質画分)に局在することを改めて確認した。プレクチンはDNA損傷後のp53の転写機能制御に関わっていることが申請者によって既に見出されており、p53は主に核内に局在することから、DNA二重鎖切断応答に関与するのは、核内に局在するプレクチンであることが強く示唆される。 次に、この核内に局在するプレクチンがDNA損傷後にリン酸化されるかどうか、抗リン酸化ATM抗体を用いて検出を試みたが、これまでに核内プレクチンがリン酸化されるかどうか確認できていない。これは、核内プレクチンの存在量が少ないため、リン酸化の検出感度に達していないことによると考えられる。 プレクチンには12種類のスプライシングバリアントが報告されている。そこで、どのバリアントがDNA二重鎖切断に対する細胞応答に関わっているのかを明らかにするため、まず、Plectin-1のcDNAをRT-PCR法により増幅した後、動物細胞用発現ベクターにクローニングし、HAタグとの融合蛋白質の発現プラスミドを構築した。しかし、唯一得られたPlectin-1発現プラスミドの塩基配列を調べたところ、PCRによって生じた変異が24個もあり、そのうちアミノ酸置換を伴うものが18個もあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プレクチンの細胞内局在について、細胞分画法によって検証することは、当初の計画通り達成された。しかし、12種類すべてのプレクチンバリアントの発現プラスミドを構築し、これらをsiRNAによって予め細胞内プレクチンの発現を抑制した細胞に導入することにより、どのバリアントがプレクチンの発現抑制により失われたp53機能を相補するのかという研究計画については、すべてのプレクチン発現プラスミドの構築が完了していないため、達成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
計画の遅延の原因は、プレクチン発現プラスミドの構築が予定通りに進まないことであるが、これは、12種類のプレクチンバリアント発現プラスミドの構築のためのベースとなるPlectin-1のクローニングがうまくいかないことによる。Plectin-1は4574アミノ酸からなる巨大蛋白質であり、そのためRT-PCR法で増幅されるcDNAの長さが約14kbにも及ぶ。この長大さのため、PCRによって増幅する際、変異が入ることを避けられないだけでなく、その変異を確認するのも非常に困難である。さらに、このようなDNA断片を発現ベクターに導入することにより、目的とする発現プラスミドのサイズは約19kbと非常に巨大なものとなり、そのため大腸菌への導入効率が極端に悪くなる。その結果、これまでに変異を多く含む発現プラスミドが一つしか得られなかった。この教訓から、計画したプレクチン発現プラスミドを得るための今後の方針として、大腸菌への導入効率が良く、塩基配列を確認しやすいように比較的短い長さ(2~3kb)のDNA断片に分けてRT-PCR法によるクローニングを行い、塩基配列が確定したものをつなぎ合わせていくことにする。また、siRNAに耐性にするための変異導入もこの短いDNA断片について行い、塩基配列が確定したものを用いる。
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