前年度、siRNAによってPlectinの発現を抑制した細胞では、放射線照射後のp53の蛋白量の制御に関与しているChk2の蛋白量が激減すること、また、このPlectin発現抑制細胞にPlectin発現ベクターを導入することにより、Chk2の蛋白量が回復することから、PlectinがChk2を安定化することにより蛋白量を制御している可能性について報告した。 そこで今年度は引き続き、PlectinによるChk2の蛋白量の制御が放射線照射後のp21の発現誘導に重要であるかの検証を行った。まず、Plectinの発現抑制によりChk2蛋白量が減少したことが放射線照射後のp21の発現誘導の低下の直接的な原因なのかを検証するため、siRNAによりChk2の発現を抑制した細胞について解析を行った。その結果、予想に反して、Chk2発現抑制細胞では放射線照射後のp21の発現誘導の低下は認められなかった。このことから、Plectin発現抑制細胞における放射線照射後のp21の発現誘導の著しい低下は、単にChk2の蛋白量の減少によるものではないことが示唆された。そこで、Plectinの標的分子として、これまでにChk2の安定化とp53依存的p21発現誘導の両者に関与することが報告されているUSP28を候補と予想し、それとの関連について解析を試みた。その結果、siRNAによるUSP28発現抑制細胞では、Plectin発現抑制細胞と同程度のChk2の蛋白量の減少が認められ、さらに、放射線照射後のp21の発現誘導においても、同様な発現誘導の低下が認められた。さらに、抗Plectin抗体を用いた免疫沈降によりUSP28が共沈したことから、両者が細胞内で相互作用していることが判明した。以上から、PlectinはUSP28と相互作用しその機能を制御することにより、放射線照射後のp53依存的p21発現誘導に関与しているのではないかと予想された。
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