研究課題/領域番号 |
15K00547
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
豊田 新 岡山理科大学, 理学部, 教授 (40207650)
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研究分担者 |
大瀧 慈 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 名誉教授 (20110463)
星 正治 広島大学, 平和科学研究センター, 名誉教授 (50099090)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 線量計測 / 電子スピン共鳴 / 歯 / 放射線事故 |
研究実績の概要 |
人の歯のエナメル質を用いて電子スピン共鳴(ESR)によって被曝線量を計測する方法は、放射線事故時に線量計素子を所持していなかった作業者や住民の被曝線量を個々に求めるために有用である。永久歯を用いた電子スピン共鳴(ESR)線量計測の手法が確立されているのに対し、乳歯はほとんど研究対象とされてこなかった。乳歯は一定の時期に必ず脱落するため、放射線事故時に線量計測のために提供される歯の多くが乳歯である。乳歯について、永久歯と同様の信頼性の高い線量計測方法として用いられるための基礎実験を行い、線量計測方法(プロトコル)を確立することを目的とした。平成27年度の研究でエナメルを抽出する方法を確立し、平成28年度には被曝線量計測に用いるESR信号の線量応答、また妨害となる有機物の信号の個体差を調べた。提供された6本の乳歯と比較のための5本の永久歯を分析した。乳歯に見られる線量応答のある信号の感度(単位吸収線量に対する信号の生成量)は永久歯とほぼ同様であるが、個体によるばらつきが約20%と、永久歯の約10%よりも大きいことがわかった。妨害となる有機物の信号についてもその強度のばらつきが永久歯よりも大きく、またその線幅についてもばらつきが大きいことがわかった。従来、永久歯の分析に用いた信号分離プログラムは乳歯にたいしても使用できることがわかったため、線量計測は問題なく行うことができると考えられる。永久歯と同様に標準試料を用いたキャリブレーション法を適用した場合に、どれくらいの変動で線量計測が行われることになるかが今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り乳歯の個体差の研究を終了し、永久歯と同一でないにしても、同様の手法で線量計測が行えることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の残りの課題である、どれくらいの変動で実際の線量計測が行われることになるか、また実際のパイロット線量計測が今後の課題である。歯のエナメルではない物質を標準試料としても用いる可能性についての検討が遅れており、この点に早急に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が予定より少額で研究を進めることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
パイロット試料測定、また歯ではない標準試料を用いた線量計測のためにより多くの物品が必要となるのにこれに充てて研究を遂行する。
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