研究課題/領域番号 |
15K00550
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
山田 裕 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 福島再生支援本部, 本部長(定常) (60192796)
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研究分担者 |
森岡 孝満 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 主幹研究員(定常) (70253961)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 低線量率放射線 / 消化管腫瘍 / APC変異 / 発がん / 年齢依存性 / 放射線感受性 |
研究実績の概要 |
低線量率放射線に長期間被ばくした場合の発がん影響について、そのリスクを明らかにすることは喫緊の課題である。特に、子どもは放射線に対する感受性が高いことが知られているが、低線量率放射線による発がん影響については不明である。そこで本研究では、放射線に感受性を示すとされる消化管腫瘍モデル動物を用いて、子ども期における低線量率放射線の影響について、その線量率および照射時年齢依存性を病理学的解析により明らかにすることを目的として行った。 ヒト家族性大腸腺腫症(FAP)のモデルであり、消化管腫瘍の自然発生が低く、放射線被ばくにより高頻度に消化管腫瘍が誘発されるC3B6F1 Min (ApcMin/+) マウスをSPF飼育条件下で、高線量率ガンマ線を生後2週齢、あるいは7週齢において0.1Gy、0.5Gyおよび2.0Gy照射した。また、低線量率のガンマ線を生後2週齢、あるいは7週齢から2週間かけて総線量が0.1Gy、0.5Gyおよび2.0Gyになるように照射した(総数190匹、コントロール34匹を含む)。 本年度は、30週齢時に剖検を行い消化管腫瘍の数とサイズを測定して線量依存性について評価し、さらに病理組織標本を作製して腫瘍の病理組織学的解析による進行度の評価も行った。非照射に比較して高線量率2.0 Gy照射により、主に直径3 mm未満の腫瘍が増加し、マウスあたりの腫瘍数が約1.6倍に増加する結果を得た。次に、消化管腫瘍の放射線誘発腫瘍と自然発症腫瘍との鑑別法の構築に向け、腫瘍部をレーザーマイクロダイセクション法(LMD法)にて回収しDNAを抽出後、複数のマイクロサテライトマーカーを用いてヘテロ接合性の消失(LOH)を調べる解析方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者のクロスアポイントメントによる他機関における業務が増加したことにより多忙となり、本研究の遂行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
発生した腫瘍組織の病理学的解析(組織型と悪性度の判定)を行う。悪性と診断された腫瘍組織試料より癌腫の部位をマイクロダイセクション法により切り取り、DNAを抽出する。18番染色体上のApc遺伝子の前後12箇所のマイクロサテライトマーカーのPCRを行いLOH解析する。ついで放射線誘発由来である欠失型による変異であるかどうかを明らかにするため、アレイCGH法によりゲノムコピー数異常を調べる。それら放射線誘発型の変異について線量率や照射時年齢により違いがあるか比較検討する。また採取した血液試料より血清を分離した後、その中の総脂質量を測定し、組織診断のついた腫瘍の発生率と血中総脂質量を求め、それらの線量率効果および照射時年齢依存性について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、本実験における照射、飼育と解剖、および病理標本作製に注力し、すべての試料採取と標本作製を終えることが出来たが、費用のかかる分子解析、血清試料の測定が遅れたため次年度使用額が生じた。
次年度に病理解析および分子解析を集中して効率よく進め、血清測定を外注により進めることとする。
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