研究課題
低線量率の放射線に長期間被ばくした場合の発がん影響について、そのリスクを明らかにすることは喫緊の課題である。特に、子どもは放射線に高感受性であるが、低線量率放射線による発がん影響については不明である。本研究では、放射線感受性発がんモデル動物を用い、子供における低線量率放射線の影響について、その照射時年齢依存性、低線量率放射線の低減係数を病理学的解析により明らかにすることを目的とした。ヒト家族性大腸腺腫症(FAP)のモデルであり、消化管腫瘍の自然発生が低く、放射線被ばくにより高頻度に消化管腫瘍が誘発されるC3B6F1 Min (ApcMin/+) マウスを用いた。高線量率(約0.5Gy/min)のガンマ線2.0Gyを生後2週齢、あるいは7週齢に照射した。また、低線量率(約0.1mGy/min)のガンマ線を生後2週齢、あるいは7週齢から2週間かけて総線量が2.0Gyになるように照射した。照射後30週齢時に、照射群および対照群における消化管腫瘍の数とサイズを計測し、その発生率を調べた。また組織切片標本を作成し病理学的に解析した。消化管(小腸)の総ポリープ数は、2週齢時における2Gy一回照射群において対照群に比べておよそ1.5倍に増加した。しかし、7週齢時における2Gy一回照射群では増加は認められなかった。2~4週齢時における2Gy低線量率照射群においては、その発生率は対照群に比べて増加する傾向を示したが、一回照射群に比べて低くなった。また誘発率の増加に伴い悪性度も増加する傾向が観察された。本年度は血清中のコレステロールを測定し、悪性度とコレステロール値に相関があることがわかった。以上の結果より、Minマウスにおける放射線による消化管腫瘍の誘発と悪性化は照射時年齢に依存しており、また子ども期の照射によるそれは線量率に依存していることがわかった。
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