研究課題/領域番号 |
15K00551
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三浦 勉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物質計測標準研究部門, 研究グループ長 (70371078)
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研究分担者 |
寺田 宙 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (10260267)
太田 智子 公益財団法人日本分析センター, 分析関連事業部, サブリーダー (60601797)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境放射能 / 天然放射性核種 / ポロニウム / α線測定 / 放射化学分析 |
研究実績の概要 |
1. Pb-210/Po-210分析法の検証:27年度に値付けしたPo-210標準液及びEckert & Ziegler社製Po-209標準液を用いて海産物等の食品試料への応用で実績があるPo-210分析法(Anal. Sci., 15, 23-28, 1999)の、stepごとのPo回収率を評価した。本分析法には酸分解、Sr Resin充填カラムによる抽出クロマトグラフィー、電着操作の3段階の分離stepがある。実験の結果、本分析法の各stepでPoが定量的に分離回収できることを確認した。また、各stepで得たPo回収率はそれぞれの拡張不確かさを考慮するとstepごとのPo回収率の有意な差は見られなかった。 2. 共同実験用試料の作成:乾燥いりこ粉末、乾燥かつお粉末をそれぞれ5 kg程度購入した。各粉末をV型混合器で混合した後、クリーンベンチ内で、PP製ボトルに100 gずつ小分けした。小分けしたボトルをAlラミネート袋に入れ、脱気封入した。その後、γ線を照射し、滅菌した。現在、複数ボトルを抽出し、均質性評価を実施している。 3. 標準分析手順書案の検討:国内外の既存の分析法を比較検討し標準分析手順書(案)の作成を継続した。 4. 液体シンチレーションカウンターによるPo-210測定:市販鉛ブロック中のPo-210を測定した。サンプリングした鉛の表面を希硝酸で洗浄し乾燥後、秤量し、硝酸に溶解してストック溶液を調製した。ストック溶液から2試料分取し、ブランク試料と共にPoを化学分離した。最終的にPo-210のα線を液体シンチレーションカウンターで測定し、Pb-210/Po-210は放射平衡と考えPb-210(Bq/kg)を求めた。その結果、Pb-210 放射能濃度は<30 Bq/kgであり、本法は金属鉛試料への適用が可能であることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「Pb-210/Po-210分析法の検証」は終了し、分析法の検証に成功した。「共同実験用試料の作成」においては、乾燥かつお粉末、乾燥いりこ粉末を購入し、共同実験用試料を作成した。現在、複数ボトルを抽出し、共同実験実施に必要な均質性評価を実施している。「標準分析手順書案の検討」においては、内外の総説、規格等を調査し、標準分析手順書案を作成している。「液体シンチレーションカウンターによるPo-210測定の検討」では、金属鉛試料中のPo-210に液体シンチレーションカウンター測定法を応用し、定量に成功した。以上、概ね研究計画は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である29年度は、Pb-210/Po-210分析法標準分析手順書の作成を進め、完成させる。調製した共同実験用試料(乾燥かつお粉末、乾燥いりこ粉末)の均質性評価を行った上で、複数機関に標準分析手順書と共に配付し、Pb-210/Po-210分析法の評価を目的とした共同実験を実施する。共同実験の結果を集計・評価し、必要であれば、標準分析手順書の修正、追記を行う。最終的に標準分析手順書と共に共同実験結果の関連学会での発表、学術誌ヘの投稿を行うことを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
紛体試料の均質化作業には、低湿度な時期に実施することが適切であるので、冬季に共同実験用試料の均質化、小分け作業を実施することにした。よって作成した共同実験用試料の均質性評価のための測定の時期を修正したことが次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、共同実験用試料の均質性評価のための測定、分析法評価のための共同実験の実施に必要な消耗品(Sr Resin充填カラム等)の調達に適切に使用する。
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