福島原発事故により放射能汚染した森林に生育する樹木内部の放射能分布を調査研究した.これまで計測したアカマツ内部の放射能分布についてさらに研究を進めた.本研究の結果として,アカマツ内部の辺材部と心材部での放射能分布の強度に大きな違いがなく,微量であることが分かった.この微量な絶対面放射能を実験的に導出するために,市販の塩化カリウムを滴下した校正ろ紙を作成した.このろ紙から放出されるベータ線のフラックスを低バックグラウンドベータ線自動測定装置を用いて測定した.この校正された塩化カリウムのろ紙とアカマツサンプルを同時にイメージングプレートに暴露することで,計測されたイメージングプレートの発光量(PSL)を面放射能に変換することができた.その結果,高さと部位により面放射能に変化がほとんど見られず,面放射能は0.004-0.005 (β-2π/s/cm2)であり,かなり低いことが分かった.このサンプルは空間線量率が約1.5 μSv/hの線量率が比較的高い森林から伐採したにも関わらず,アカマツ内部の放射能はかなり低いこと,部位による変化もほぼ無いことが分かった.そしてアカマツに含まれる放射性物質は放射性セシウム以外の自然放射性物質であるカリウム40,炭素14も無視できないことが分かった.このため,樹木内部の放射能を計測する場合,これらの自然放射性物質の寄与も考慮に入れる必要がある. さらに空間線量率が0.5-3.4 μSv/hの森林から伐採されたスギについても,地表から異なる高さで放射能分布について計測調査した.内部の放射能分布は心材部の方が辺材部よりも高いこと,節の部分で相対的に放射能が高いことが分かった.しかし,計測結果からスギ内部の放射能分布に高さや空間線量率により相関性を見出すことは出来なかった.
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