研究実績の概要 |
環境などから体内に取り込まれたN-ニトロサミンや生体内で生成したN-ニトロソアミノ酸が全身循環して皮膚に達し、日光などの光照射により反応して、活性酸素種・NOラジカル・アルキルラジカルなどを生じ、光遺伝毒性・変異・蛋白機能傷害を起こす可能性を明らかにするために、次の研究を行った。 UVAにより活性化したN-ニトロソプロリン(NPRO)によるデオキシアデノシン(dA)への反応をLCMSMS等で定量解析したところ、dAの2位及び8位への新規のピロリジル付加体を見出した。8位付加体形成はNPROのUVA吸収曲線にそっており、光エネルギーがNPROに吸収されて反応を起こしたことを示している。が、2位付加体形成は光依存性ではあるが、NPROのUVA吸収曲線には沿わなかったため、なんらかの2次反応が介在していると考えられる。子牛胸腺DNAへの、UVA活性化NPROによる付加体形成をLCMSMS等で定量解析を行った結果、デオキシグアノシン(dG)の8位、dAの2位及び8位へのピロリジル付加体6種と8-オキソグアニンを見出した。付加体形成は好気的条件・嫌気的条件ともにみられた。dA付加体は嫌気的条件で生成量が増しており、光反応は主に活性酸素を経由しないType I機構で起こると考えられる。一方、dG付加体は好気的条件での生成量がやや多く、活性酸素種も関与している可能性がある。 さらに、NPROに加えて、N-ニトロソピロリジン(NPYR)とN-ニトロソモルホリン(NMOR)の光遺伝毒性研究を行った。NPROおよびNMORの光活性化体は37℃で10日以上安定,かつpH 5からpH 11までの液性で変異原性を保つことがわかったので、全身循環に回りうると考えられる。またNPYRおよびNMORが、UVA活性化によりヒト由来表皮角化細胞HaCaTへ小核形成を誘導し、光遺伝毒性を示すことを見出した。
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