研究課題
本研究では、巻貝類における核内受容体の機能解析を行うと共に、環境化学物質に対するこれらの環境化学物質に対する生体影響を予測するための分子基盤を構築することを目的としている。本年度は、クローニングしたクロアシカサガイ、ウミヤツメ、エイPPARγのアゴニスト活性評価系を構築し、ヒトPPARγにおけるアゴニストであるrosiglitazone、トリブチルスズ(TBT)およびTPTに対する応答性について検討を行った。1 nMから10 μMの濃度範囲でRosiglitazoneに対する応答性について検討を行った結果、ウミヤツメ、エイPPARにおいては1 μM以上の濃度でluciferase活性の上昇が認められた。一方で、クロアシカサガイPPARでは10 μMでもluciferase活性の上昇は認められなかった。同様に1~100 nMの濃度範囲でTBT、TPTに対する応答性についても検討を行った。その結果、ウミヤツメにおいては10 nM以上のTBT、30 nM以上のTPTにおいてluciferase活性の上昇が認められた。また、エイにおいては、3 nM以上のTBT, TPTにおいてluciferase活性の上昇が認められた。一方で、クロアシカサガイではTBT、TPTに対しても応答性が認められなかった。以上の結果から、ウミヤツメ、エイPPARγにおいてもヒトPPARγと同様にrosiglitazone, TBT, TPTがアゴニストとなることが明らかとなった。一方で、クロアシカサガイPPARγは検討に用いたいずれの化合物とも反応しなかったことから、脊椎動物PPARと無脊椎動物PPARではリガンドとなる化合物が大きく異なる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度途中で研究代表者の所属が変わったことが影響して、リガンド結合実験の進捗に関しては、当初予定より遅れてしまったが、その代わり、アゴニスト活性評価の検討については、当初予定を前倒しして検討を進め、ほぼ完了している。以上のことから当初計画とは、多少前後する部分はあるものの、順調に進んでいる。
ウミヤツメ、エイPPARγのアゴニスト活性評価が一通り完了したため、これらの核内受容体についてリガンド結合実験を行い、rosiglitazone、TBTおよびTPTとの親和性について検討を行う。また、クロアシカサガイPPARγのリガンドとなる化合物の探索を行う。
研究代表者の所属変更の影響で、予定していたリガンド結合実験のための試薬の購入を先送りにしたことが影響したと考えられる。
予定している実験に使用する試薬の他、リガンド結合実験に使用するRI核種やクロアシカサガイPPARγのアゴニストとなる可能性がある化合物の購入に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件)
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