研究課題/領域番号 |
15K00561
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
杉山 圭一 国立医薬品食品衛生研究所, 変異遺伝部, 室長 (80356237)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / エピ変異原 / DNAメチル化酵素 / ヒストン修飾 / 酵母 / 凝集 |
研究実績の概要 |
二カ年目となる今年度の主要な研究テーマとして、ヒトDNAメチル化酵素(DNA methyltransferase; DNMT)遺伝子形質転換酵母(ヒトDNMT酵母)のDNMT阻害剤以外のエピ変異原に対する応答解析をあげていた。一連の解析から、Histone deacetylase(HDAC)阻害剤であるTrichostatin A(TSA)処理により凝集性が誘発されることを明らかにした。また、ヒトDNMT酵母細胞内のFLO1 mRNA量は、TSAにより増加することも確認した。さらに、上述の作用は野生型酵母(非ヒトDNMT酵母)においても認められるとの結果を得た。DNMTとは異なりヒストン修飾酵素については、本研究で使用している出芽酵母と哺乳類動物細胞にはホモログが存在していることから、非ヒトDNMT酵母が示した今回の応答については、この観点から矛盾はないと考えられる。本研究から得られた結果を考察すると、エピ変異原検出系におけるヒトDNMT酵母の特徴として、DNMT阻害剤に留まらずヒストンを作用点とするエピ変異原の検出能も有することが推測される。すなわち、TSAによりヒトDNMT酵母および野生型酵母においてFLO1 mRNAレベルと凝集性が促進された事実は、ユニバーサルなエピ変異原を検出するうえで大きなブレイクスルーと考える。育種したヒトDNMT酵母をエピ変異原検出系のプラットフォームとして実用化するうえで、主要なエピ変異原と考えられるDNMT阻害剤とヒストン修飾酵素阻害剤の両剤に対して応答性を確認できたことは、来年度以降に実施する予定のユニバーサルな同検出系創出にあたり必要条件でもあり、本研究の大きな成果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討課題として本年度の目標に掲げたヒトDNMT酵母が示す誘導型細胞凝集性に対するDNMT阻害剤以外のエピ変異原の応答性について、HDAC阻害剤であるTSAを被検物質に同阻害剤濃度依存的な反応を確認できたことは、ほぼ当該年度の研究計画に沿った成果と判断している。ただし、TSA以外のヒストン修飾酵素阻害剤に対する影響について検討することについては、今後の要検討項目とも考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、前年の研究実施計画において主要な課題としたヒトDNMT酵母が示す誘導型細胞凝集性に対するヒストン修飾剤(TSA)の作用を検証し、濃度依存的な促進作用を見出した。本年はエピ変異原に可塑的応答性を保持する可能性のある本凝集性をエンドポイントとした頑健性の高いレポーターアッセイの構築を主要テーマに掲げる。既に本凝集性には酵母凝集関連遺伝子の1つFLO1の関与を明らかにしている。エピ変異原を短期に、かつユニバーサルにスクリーニングできる世界初のバイオアッセイシステムの構築に注力する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時当初の研究計画に照らした場合、現在までの研究進捗状況については若干の遅延が認められる検討項目があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては研究計画を適宜見直しした上で、研究を進めるうえで必要となる各種試薬および実験資材等の消耗品費、学会出張および打ち合わせ等の旅費、また学会参加費、英文校閲料、論文掲載料などを昨年度同様に適切に計上・執行していく予定である。
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