昨年度までの成果として、育種したヒトDNAメチル化酵素(DNA methyltransferase; DNMT)遺伝子形質転換酵母(ヒトDNMT酵母)で顕在化した凝集反応をエピ変異原検出系のメルクマールとして利用できること、また凝集関連遺伝子の1つFLO1遺伝子プロモーター配列を用いたレポーターアッセイ系も同様に活用できる可能性を示した。本結果を受けて、最終年度となる今年度は、環境化学物質からDNAメチル化阻害作用が検出可能か検証を行った。その結果、かび毒のオクラトキシンAについては、ヒトDNMT酵母で明確に顕在化する凝集性のみならず凝集関連遺伝子FLO1の転写レベルについても抑制作用を示す可能性を見出し、ヒト由来HEK293細胞におけるゲノムDNAのメチレーションレベルも減少させ得る可能性を認めた。今回得られた結果は、化学物質による真核微生物の酵母細胞内で生じるエピジェネティック制御への撹乱作用が動物細胞においても同様に認められる可能性を環境化学物質を用いて示しており、その意義は大きいと考える。以上の一連の成果は、本研究の主要な目的となるエピジェネティックな変異原作用を可視化する検出系の構築がDNMT酵母で顕在化した凝集反応を利用することで可能となることを示唆している。ただし、今回構築した検出系の妥当性検証を継続的に実施することは実用化に向けて避けては通れない課題として以前残されており、今後さらなる研究の推進が求められるとも考えている。
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