東日本の主要な二次林であるミズナラ林において、管理放棄が進行した1970~80年代から現在までの30年~40年間に植物の種組成や種多様性にどのような変化が生じたのかを、1970~80年代に申請者が植生調査を行った地点に再訪して同一方法で調査を実施する再訪調査という手法を用いて研究を行っている。 本年度は、北海道および東北地方での追加の再訪調査を実施するとともに、前年度までに収集した植生調査資料を集計・解析して植生学会大会および日本生態学会大会で発表を行った。 北海道ではかつて林内に生育していた草原生の植物が大きく減少していること、これに変わって森林林床生の植物が増加していることがわかり、森林の発達による林内環境の変化が種組成変化に大きくかかわっていると考えられた。また、調査区当たりの出現種数であらわされる種の豊かさは、1970~80年代よりも減少しており、減少率はシカの生息痕跡や食痕などが認められる調査区よりも、シカの影響のない調査区で減少率が高くなっていた。これら一連の成果を2017年10月22日に開催された植生学会第22回大会においてポスター発表を行った。 また、これまでに東北地方で得られた資料をもとにも解析を進め、東北地方のミズナラ林では管理放棄に伴う遷移の進行によると考えられる植生変化が進行し、植生変化の大きさを表す組成変化量は多雪地や高標高域で少ないことが明らかとなった。この成果は2018年3月23日に開催された日本生態学会大会で発表した。
|