研究課題/領域番号 |
15K00568
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
能田 淳 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (70551670)
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研究分担者 |
萩原 克郎 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50295896)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大気科学 / 大気汚染物質 / バイオエアロゾル / 感染症対策 |
研究実績の概要 |
環境中に存在する病原性微生物は、人や動物の健康に甚大な支障をきたし多大な損害をもたらすことから、これら諸問題を最小限化することは公衆衛生のみならず、社会における重要な課題である。本研究では、バクテリアやウイルスなどの微生物由来成分を含むバイオエアロゾルが浮遊粒子状物質として大気中に存在する際、大気汚染物質の存在が何らかの理由でこれら微生物の生存、保護に寄与しているという仮説のもとに、汚染物質を含むサブミクロンサイズのエアロゾルにて大気中の微生物への影響を検証することを目的としている。対象とする環境中の汚染物質は、炭化水素の不完全燃焼から排出される黒煙(煤)などである。これらがエアロゾルとして存在した状況での微生物相への影響を異なる反応チャンバーにてシミュレーション実験を行っている。また、異なる温度、湿度、紫外線照射、オゾン暴露下などの実際の大気環境中で起こりうる条件を、実験室レベルで評価し、大気汚染物質である煤などの存在がバイオエアロゾルに及ぼす影響の把握を行っている。これらの結果から疾病蔓延の予防策のための情報提供のために基礎的な知識の蓄積を行うことを大きな目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の主な目的は、大気汚染物質のひとつである煤が微生物の不活化にどの様な影響を及ぼすかを検証することにある。煤を使用する主な理由としては、煤は様々な過程で生成されるが、その中でも、化石燃料、バイオマス燃料などの炭化水素の不完全燃焼過程にて生成されるため、大気汚染物質として様々な場所で発生しており、重要な調査対象になるであろうと考えたからである。先行研究から、乾燥したヘドロ成分においてバクテリアの不活化を阻害する作用が見られたことから、有機物質と微生物の関係について大気中で起こりうる状況について検証を行っている。本実験では、煤を人工的に生成し、これらがバイオエアロゾルの不活化に至る割合の違いを検証している。当初の計画では、煤の修飾を受けたダストなどの導入を検討したが、修飾の手間と度合いに不均一な要素が含まれ、これらが実験に及ぼす影響を鑑み、煤を発生させ、直接暴露する方法での実験を行った。煤の生成にはヨーテボリ大学Hallquist 教授らの協力を得て実験を推進した。Hallquist 教授とはこれまでにも共同で研究を行ってきた経緯があり協力を得る体制は既に確立されていたことから、順調に実験が遂行した。予備実験では、ヨーテボリ大学にある流動式チャンバーを活用し、安定的に発生させた煤とバクテリアを混合し、生存率の比較を行うことができた。 また、実際にウイルスを含むバイオエアロゾルを使用して細胞への感染を確認する実験を本学の萩原教授(ウイルス学)らと共同で進めている。これら感染力を検証する実験では、大気中での異なる暴露前の対流時間が感染に及ぼす影響を実験中であり、大気中(チャンバー内)に浮遊しているウイルスの感染能を評価する実験系の準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度のうちに、いくつかの実験系を試すことができたことは今後の推進に大きく貢献するであろう。当初の計画から大きな変更は無く、引き続きヨーテボリ大学での共同研究を行うことを予定している。流動式チャンバーの実験では、継続した煤の安定的な生成と併せて、継続的なバイオエアロゾルの噴霧が可能となるように異なるネブライザーの導入などを視野に入れていく。 ウイルスの感染力価を評価する実験では、大気中での異なる暴露前の対流時間が感染に及ぼす影響を実験しており、それに加えて、今後は紫外線、消毒薬、その他の環境因子が感染に及ぼす影響についての検証を進めていく予定である。また、異なる病原体を使用した実験も検討していくことを目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していたパーティクルカウンターが本研究で必要とされる機能を十分に備えていないことが判明し、適切な機器の選択に時間を浪費してしまったため年度内の購入が間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終的に、必要とされる機種の選択ができたので、新たなパーティクルカウンターの購入を計画している。
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