研究課題/領域番号 |
15K00569
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
峯木 礼子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40317475)
|
研究分担者 |
峯木 茂 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 嘱託教授(非常勤) (40120216)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 環境影響 / 健康影響 / ナノ粒子 / 腸内細菌 / プロテオミクス / リン酸化 / ストレス / 有機酸 |
研究実績の概要 |
環境に放出されるナノ粒子は工業の発展と共に急増している。美白目的に化粧品や食品、抗菌目的に食品専用の容器に銀ナノ粒子が使用されている様に私たちの体内にナノ粒子は容易に入りこみ、胎盤・母乳を通して胎児や乳児にまで届く。ナノ粒子の毒性機構を解明する為、ナノ粒子による①生育阻害機構と②細菌の生育への影響を詳細に調べて毒性を評価し、その危険性の発信を目的とした。6種のグラム陰性菌と3種のグラム陽性菌を用いて研究をおこなった結果、汎用されるブラックカーボンやルチル型酸化チタンでさえ、グラム陰性菌の生育を阻害した。ペプチドグリカン層の厚さに依存すると思われる。細胞壁や細胞膜へ障害を与えて細胞内に侵入し、生育阻害を起こす可能性が考えられる。腸内でのグラム陽性菌の高比率は肥満やガン患者でも報告されている。ナノ粒子により生育阻害を起こした大腸菌と生育阻害の無いコントロールについてiTRAQ 法により網羅的なタンパク質の比較定量解析を行い、ナノ粒子の影響による発現タンパク質の相違を調べた。1,4-dihydroxy-2-naphthoyl-CoA synthaseが最も増加し、Aminomethyltransferaseが最も低下するという結果を得た。1,4-dihydroxy-2-naphthoyl-CoA synthaseは腸内細菌が作り出すビタミンKの合成に関与する酵素である。ビタミンKは血栓等に投与されるワルファリンの作用を減弱することは周知である。Aminomethyltransferaseの低下はグリシン開裂系の異常となり、多動・自閉症などをもたらす原因となるとの報告がある。細胞レベルでの関連性の有無に興味が持たれる。現在、ナノ粒子の影響をうけた発現タンパク質のリン酸化の相違を調べている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子の毒性については腸内細菌の中でもグラム陽性菌は生育の影響はあまりなかったが、グラム陰性菌では影響を受けてナノ粒子の濃度に依存して生育が悪くなった。 iTRAQ 法によるタンパク質の発現差異の確認の実験では、ナノ粒子の影響によって増加したタンパク質および減少したタンパク質をそれぞれ確認した。1,4-dihydroxy-2-naphthoyl-CoA synthaseが最も増加し、Aminomethyltransferaseが最も低下するという結果を得た。現在、ナノ粒子の影響をうけて発現したタンパク質と影響を受けないコントロールにリン酸化に違いがあるかを調べている。SDS-PAGEとPhos-tag SDS-PAGEを用いての二次元電気泳動では12スポットに相違がみられ、現在そのスポットをゲル内トリプシン消化後LC/MS/MSにて解析中である。
|
今後の研究の推進方策 |
変異原性試験(Ames法)では陰性でありながら生育阻害を起こすという事実に基づき、粒子表面に付着する化学物質の作用の影響がないナノ粒子が慢性毒性を示していると考え、実験をおこなっている。腸内細菌にナノ粒子を曝露して試料とし、細胞内の変化よりナノ粒子の曝露が細菌にとってストレスとして捕らえているかを考察する。ナノ粒子と接することで生じるリン酸化および酸化ストレスの変化を探る。細胞内にナノ粒子が入るか否かを電子顕微鏡で評価し、チャネルの有無および細菌の解毒戦略について解明する。
|