研究課題/領域番号 |
15K00570
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
駒井 幸雄 大阪工業大学, 工学部, 教授 (00446808)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 渓流水 / 窒素濃度分布 / 分布型流出解析モデル / IFAS |
研究実績の概要 |
未調査の福岡県東部および大分県の渓流水調査を実施した。人為的水質汚濁源がない渓流水について、2016年3月~11月に福岡県85地点、大分県174地点で1回の採水を行った。採水は降雨の影響がないと判断された時に行った。分析項目は、硝酸態窒素(NO3-N:フローインジェクション法)、全窒素(TN:オートアナライザー法)等である。得られたデータはGIS を使って整理し、窒素濃度、地理的分布の特徴、自然的・社会的要因との関係について考察した。 福岡県東部のNO3-Nは0.12~4.19 mg/L(平均値:0.96 mg/L)で、1mg/L以上の地点のうち70%は北九州市内にあり、諸要因との関係については、大気中のNOx濃度の影響が示唆されたことを除くと、一定の関係は認められなかった。東南部および南部の森林地域には低濃度の地点が多く分布していた。 大分県のNO3-N濃度は0.04~1.8 mg/L (平均値:0.40 mg/L)で、1.0 mg/L以上を示した9地点のうち7地点は国東半島の北東部にあった。南部および北西部の森林地域には低濃度の地点が多く分布していた。自然的要因および社会的要因とNO3-N濃度との関係を見たところ、いずれも関係は認められなかった。 森林域からの窒素流出のシミュレーションモデルとして、(研開)土木研究所のICHARM(水災害・リスクマネジメント国際センター)が開発した分布型流出解析モデルであるIFAS (Integrated Flood Analysis System: 統合洪水解析システム)の妥当性を検討した。愛媛県の一級河川である肱川を対象について、ハイドログラフのキャリブレーション・バリデーションとも5項目の評価基準のすべてにおいて良好な再現性が得られた。このことから、本研究における分布型流出モデルとしてIFASを使用することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は福岡県と大分県の渓流水調査と分布型流出解析モデルの検討を計画した。 福岡県東部と大分県の調査は終了した。また、分布型流出解析モデルとしては、土木研究所のIFASの使用が可能かどうかを検討し、良好な結果を得られた。これにより、瀬戸内海流域圏の森林域からの窒素流出を検討するうえで必要な内容をほぼそろえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
福岡県西部および大分県の国東半島における渓流水調査を実施し、既往データと合わせて瀬戸内海流域圏全体の森林渓流水中窒素濃度の分布特性について明らかにする。 分布型流出解析モデルとしてIFASを使うこととし、負荷量の計算に必要な窒素濃度について検討し、合わせて瀬戸内海流域圏における森林からの窒素流出量の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた採水のための調査がすべて行えなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
渓流水の追加調査旅費、国際会議参加旅費、分析に必要な消耗品、謝金、その他
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