研究課題/領域番号 |
15K00573
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
大塚 宜寿 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質・環境放射能担当, 担当部長 (30415393)
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研究分担者 |
蓑毛 康太郎 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質・環境放射能担当, 主任研究員 (40415394)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ネオニコチノイド / 殺虫剤 / 河川水 / 下水処理場 / 排出実態 / 汚染源解析 / 非負値行列因子分解 |
研究実績の概要 |
水試料中のネオニコチノイド系殺虫剤とフェニルピラゾール系殺虫剤フィプロニル,および3種のネオニコチノイド系殺虫剤(ニテンピラム,チアクロプリド,アセタミプリド)の分解物の濃度を初年度に開発した同時分析法で測定した。下水処理水の測定データを補完するために,農業集落排水施設12施設からの放流水を調査した。流域下水道の処理場の放流水と比較して施設によって濃度構成比に違いがみられたものの,平均すると良好に一致した。これは,流域下水道の処理場は農業集落排水施設より処理人口が多く,より平均的な下水が流入するためと考えられる。昨年度の8月に続いて,今年度の4月および8月にも県内の35河川38地点の河川水を調査した。これまでに得た河川水の濃度データに対して非負値行列因子分解を行うことにより,本殺虫剤の排出源推定を試みた。河川水濃度データに対して,因子数を2と仮定して非負値行列因子分解を行ったところ,それぞれジノテフランとクロチアニジンが卓越した濃度構成比が得られた。これは,ジノテフランとクロチアニジンは濃度が高く,他の化合物との相関性が低いためと考えられる。因子数を3と仮定して非負値行列因子分解を行うと,上記の2構成比に加え,3つ目としてイミダクロプリド,チアメトキサム,フィプロニルを主としアセタミプリドやアセタミプリドの分解物であるデスメチルアセタミプリドも構成成分とする構成比が得られた。下水処理場の下流に位置し,その影響が大きいと予想される地点では3つ目の因子の寄与が高い結果が得られた。下水処理水は,河川水に比べてイミダクロプリドとフィプロニル,アセタミプリドの分解物であるデスメチルアセタミプリドの濃度が高いことから,3つ目の因子は,下水処理水の特徴を反映している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
下水処理水の測定データを補完するために,農業集落排水施設9施設からの放流水を調査した。下水処理水は,流域下水道の処理場および農業集落排水施設の放流水は,河川水に比べてイミダクロプリドとフィプロニル,アセタミプリドの分解物であるデスメチルアセタミプリドの濃度が高い特徴があることを見出した。また,排出源解析の対象データを得るため,昨年度の8月に続いて,今年度の4月および8月にも県内の35河川38地点の河川水を調査した。今年度は天候不順が続いたため,降雨による河川水への影響が懸念されたが,観測された濃度レベルは例年と同程度であった。これまでに得た河川水の濃度データに対して非負値行列因子分解を行うことにより,調査対象とした殺虫剤の排出源推定を試みた。その結果,下水処理場の下流に位置し,その影響が大きいと予想される地点では,濃度構成比に下水処理水の特徴を有する排出源からの寄与が大きいなど妥当な結果が得られ,非負値行列因子分解による排出源解析の可能性を確認することができた。 今までに得られた研究成果の一部を国内学会および国際学会で発表した。また,講演会や研修会でも今までに得られた研究成果の発表を行った。これまでに得られた研究成果の公表を準備している。
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今後の研究の推進方策 |
下水処理場放流水とその流入する河川の上下流地点の河川水の調査をさらに実施して,非負値行列因子分解による排出源解析の対象データを蓄積する。これまでに得たデータを用いて非負値行列因子分解法を用いて排出源解析を行う。排出源のひとつとして下水処理場放流水の濃度データを用いるなどにより,解析結果の向上を図る。 今までに得られた研究成果の一部を国内学会および国際学会で発表する。これまでに得られた研究成果の公表を準備している。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)購入資材の値引き等により差金が生じた。 (使用計画)ネオニコチノイド系殺虫剤およびそれらの分解物等について調査,分析に必要な器具,試薬等を購入する。非負値行列因子分解による排出源解析に必要な機材の購入や研究成果の公表に係る費用に充てる。
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