研究課題/領域番号 |
15K00574
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
辻 彰洋 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40356267)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Pseudanabaena属 / 2-MIB / カビ臭 / Pseudanabaena foetida |
研究実績の概要 |
Pseudanabaena属の2-MIBによるカビ臭産生種として、新たに2新種の記載論文を投稿し、1変種を記載した。 そのうち一変種は、名古屋城から分離され、現在では国立環境研究所の微生物系統保存施設が分譲しているNIES-512株で当初Phormidium tenueと同定され、その後、Pseudanabaena galeataと同定されてきた種である。光学顕微鏡観察と16S rRNAやITS遺伝子、rbcL遺伝子を用いた解析により、同株がP. foetidaとP. subfoetidaの中間的な形態と遺伝子を持つことが明らかになり、P. subfoetidaをP. foetida var. subfoetidaとして組み換え、NIES-512株をP. foetida var. intermediaとして新変種として記載した。これら3分類群はITS領域の立体構造からも別分類群とすることが指示された(Tuji & Niiyama 2016)。また、琵琶湖から分離されノルウェーのNIVA-CYAで維持管理されてきたNIVA-CYA111、および小川原湖から私達が分離した株をそれぞれ新種として記載した(Tuji & Niiyama submitted)。 研究当初の作業仮説では、1分類群によると考えていたので、大きく作業仮説が崩れたことになる。この新たな2変種と昨年度記載したP. foetida群とクレードがすべて異なり、2-MIBによるカビ臭産生種の遺伝的多様性が分かってきたことになる。また、従来、応用研究者によって用いられてきた細胞径と細胞長によるカビ臭産生の判定方法や、蛍光顕微鏡による判定のいずれも適用できないことが分かった。 またITS領域を用いて、Pseudanabaena属について霞ヶ浦のメタゲノム解析を行った。これらについては、解析途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の作業仮説では一分類群と考えていたが、日本全国から株を分離し検討した結果、現在までに5分類群の新種記載を行う事が出来た。これらは形態的にも遺伝的にも多様で、2-MIB産生Pseudanabaena属の多様性を示すことが出来たと考えられる。また、2-MIB産生に関わる遺伝子の検討など、今年度以降に実施予定だった内容についても試行することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2-MIB産生Pseudanabaena属について、2-MIB産生に関わる遺伝子の解析を進める。特に、遺伝子を一部保有するが2-MIBを産生しない株について、それらの遺伝子がどのような状態にあるかについて詳しく解析する。また、現場での2-MIB産生Pseudanabaena属の解析に資するため、2-MIB産生種を区別するための方策について、形態・色素(蛍光を含む)・メタゲノム解析など多方面から検討を行う。特にメタゲノム解析については、近年急激に使用例が増えてきたNanoporeを用いた2-MIB産生Pseudanabaena属の検出に挑戦したい。金額が安価であることからうまくいけば急激に普及すると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に試薬の納期が間に合わなかったものがあったため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に試薬を購入する予定です。
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