研究実績の概要 |
日本各地の湖沼からプセウドアナベナ(Pseudanabaena)属種を分離培養し、分類学的検討を行った結果、2-MIBを産する3種5分類群(Pseudanabaena foetida var. foetida, P. f. var. subfoetida, P. f. var. intermedia, P. yagii, P. cinerea)を見いだした。いずれも新分類群として、新たに記載した。Pseudanabaena属の分類群を区別するのにITS領域の立体構造が有用であった。研究当初の作業仮説では、本邦の2-MIBを産するPseudanabaena属種は1種類と考えていたが、研究の結果、遺伝的にも多様性のある3種が見つかってきた。 これらの2-MIB産生種は、その形態的特徴(サイズや色)が多様であり、非産生種と形態的特徴で区別することは出来なかった。従来、含有色素や細胞サイズで区別できるという論文が存在したが、私たちの結果はそれらの論文の結論を否定するものであった。 これらの種の2-MIBに関するgene clusterを形成する4遺伝子を調べたところ、産生種では4遺伝子共に系統関係を反映していたが、非産生種では水平伝播を示唆する結果が得られた。 本研究の結果、本邦の2-MIBを産するPseudanabaena属種については、ほぼ網羅出来たと考えている。しかし、非産生種については、既存種の実態が不明なこともあり、分類学的検討が不十分なままである。
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