本研究は乾燥地域に位置する埋立地を対象に、安定化と浸出水の管理戦略等を明確にすることを目的に実施した。具体的に次の4点を対象とした。(1)浸出水が発生する期間とその量の予測、(2)浸出水による地下水汚染の可能性の検討、(3)蒸発による廃棄物の乾燥過程に関する検討、(4)カラム実験による有機物の分解の検討である。初年度に(1)を実施し、乾燥地域では浸出水は廃棄物に含まれる水分由来であること、搬入が停止すると速やかに浸出水の発生や止み、埋立層内部の水分量も減少していくことを明らかにした。(4)のカラム実験は初年度より平成29年度初めまで層内の含水率、炭素、窒素等の収支を測定した。乾燥が進行することでガス発生量が低下し、層内残存割合が高くなった。 (3)については平成28年度の検討では、上部が乾燥して液状水移動が停止するが、深部で内部蒸発が起こり乾燥が進行するという結果を得た。この結果から乾燥地域での埋立物は内部から乾燥が進行し最終的に絶乾に至ると結論付けた。一方で、(4)のカラム実験では2.5年を経過しても80cmの充填層の底部には水分が多く残存していた。これらの違いから、再度、最終年度に液状水移動の可能性と内部蒸発に焦点を当てて検討した。NaClを含浸させた乾燥実験を行った結果、上部への移動が認められ、乾燥が進行する段階でも液状水移動が起こっていることが確認された。この液状水移動を把握するために、絶乾状態までの水分特性曲線を土柱法、遠心法、蒸気圧法により把握し、不飽和の液状水移動を再現した。更に、熱、水蒸気、内部蒸発と連成し、カラム実験結果をモデルで再現した。作成したモデルにより実規模の埋立層に関して長期数値計算を実施した結果、30年程度経過しても2m程度の深度までしか乾燥は進行せず、底部には水分が残存するという結果を得た。
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