研究実績の概要 |
一般廃棄物焼却施設の半数以上を占める,ストーカ炉を採用し消石灰を用いた乾式酸性ガス処理と1段式のバグフィルタ(BF)による集じん処理を行っている施設から,施設運転データと処理後の酸性ガス濃度データ,飛灰を入手し分析した。その結果,酸性ガス除去率は,高反応消石灰の吹込み,ごみ1tあたりの消石灰吹き込み量が多く,減温後排ガス温度が低い場合,高い傾向が見られた。しかし,飛灰中の消石灰と酸性ガスの反応生成物は,SOxとの反応生成物としてCaSO4が検出されたものの,HClとの反応生成物は一般的に知られているCaCl2の無水和物や水和物ではなく,CaClOHであった。 消石灰と酸性ガスの反応特性を詳しく調べるために熱力学平衡計算ソフトを用い,温度,酸性ガスおよび共存ガス濃度,消石灰量をパラメータとして反応シミュレーションを行った。120-200℃においてCa/Cl≧1の場合,150℃以上でCaCl2が急激に減少しCaClOHが生成した。SO2はどちらの条件でもCaSO4が生成し,上記パラメータによる反応生成物の変化はなかった。 流通式反応装置を用いた170℃,Ca/Cl=0.1-5の条件での室内実験でも,Ca(OH)2とHCl反応生成物はCaClOHであり,焼却施設の飛灰分析結果と一致していた。CaClOHとHCl反応によるCaCl2生成を確認するためにCaClOH+Ca(OH)2+CaCl2の混合体とHClの反応を行ったが,Ca(OH)2+HCl→CaClOH反応が先に進み, CaCl2の増加は見られなかった。以上の結果から,消石灰の効率的利用を考えるとCaCl2まで反応を進行させることが望ましいが,現状の乾式処理ではCaClOH生成に留まっている可能性が示唆された。
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