研究課題/領域番号 |
15K00584
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
橋本 淳 大分大学, 工学部, 准教授 (00342551)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | すす / 粒子状物質 / 多環芳香族炭化水素 / 拡散火炎 / 燃焼 |
研究実績の概要 |
近年,PM2.5という言葉が浸透したように,大気汚染物質として微小粒子状物質(PM)が注目を集めている.数マイクロメータ以下の粒子は気管支,肺と深く到達し,健康へ与える影響が大きいとされる.一方で,生活を支える各種燃焼機器は,高圧下,つまりは微小粒子が生成しやすい条件での運転が求められている.そのような条件下においては,実験の困難さ故,微小粒子の生成メカニズムについて不明な部分も多い.本研究では,高圧下における微小粒子状物質の生成機構の解明および予測モデルの構築を目的としている. 本年度は,常圧対向流燃焼器を用いてプロパン火炎,イソオクタン火炎およびガソリンサロゲート火炎(イソオクタン・ノルマルヘプタン・トルエン混合燃料)における,すす前駆体の生成特性,すす生成特性を調べた.実験には,加熱脱着装置付ガスクロマトグラフ・質量分析器およびレーザ透過光減衰法を用いた.さらに,高圧対向流火炎について燃焼ガスの採取システムを作成し,すす前駆体の検出に成功した.また,高圧下で適用可能な液体燃料気化器の設計製作を新たに行った.高圧火炎では粒子量の定量化は準備中であるものの,目視では増大している.また,検出されたすす前駆体については,圧力の増加に伴い検出量が増加する傾向が確認された.各実験結果は既存の数値モデルと比較して検証を行い,既存モデルに修正を行った.結果として,論文2報,学会発表11件の報告を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまず常圧下において,ガスクロマトグラフおよび質量検出器を用い,対向流拡散火炎から生じるすす前駆体およびすす体積分率の計測実験を行った.その結果,プロパン火炎,イソオクタン火炎,さらにはガソリン燃料を模擬したイソオクタン・ノルマルヘプタン.トルエン混合火炎について,7環の芳香族炭化水素までの検出に成功,定性分析に加え,数値解析と比較できる形での定量分析にも成功した.レーザ透過光減衰法により計測したすす体積分率とともに,貴重なデータベースが構築されている.また,詳細反応を考慮した数値解析を実施,既存数値モデルの検証およびモデルの改良を行った.これらの結果は,論文および学会発表で公表している(一部未公表).高圧対向流燃焼器については,まず,高圧容器からの燃焼ガス採取装置の設計製作を行った.その動作が概ね問題ないことを確認した後,高圧プロパン対向流拡散火炎に対して燃焼ガスの採取,化学種分析を行った.その結果,圧力に対するすす前駆体の変化を捉えることに成功した. 以上から,一部に遅れがあるものの,前倒しで実施している内容もあり,総合的には概ね順調であると判断した. 【すす前駆体】:固体であるすすの元となる化学種,多環芳香族炭化水素と考えられている.
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今後の研究の推進方策 |
常圧燃焼器での実験を継続し,精度向上と数値モデルの検証を行う.さらに,高圧燃焼器での前駆体計測実験を推進する.前駆体計測装置は概ね完成しており,再現性向上のために改良を行う.また,高圧火炎に対するすす体積分率も計測可能なように,レーザ透過光減衰法実験システムの構築を新たに行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に配分金額が減額されたことから,必要な性能をもったカセグレン光学系の導入が行えなかった.差額は化学種分析のための費用に使用した.一方,高圧燃焼器の改良および燃焼ガス採取システムの施策には,学内設備(工場)および学内予算を使用して試行錯誤を行った.その結果,残額が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度残額は平成29年度,次のように使用する.まず,高圧対向流燃焼器の実験精度向上のために質量流量制御器,温度計測器を新規導入する.さらには高圧容器用のレーザ計測システムの構築を行う.
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