近年,健康へ与える影響が大きい大気汚染物質として,微小粒子が注目を集めている.生活を支える各種燃焼機器は,効率向上の観点から高圧下での運転が求められている.そのような条件下においては,実験の困難さ故,微小粒子の生成メカニズムについて不明な部分も多い.本研究では,高圧下における微小粒子状物質の計測実験を行い,生成機構の検討と予測モデルの構築を試みた. 実験には対向流燃焼器を用いた.本燃焼器は向かい合った2つのダクトから構成されており,ダクト間のよどみ点近傍に拡散火炎を形成させることができる.火炎に作用する流速は,実用機関における乱れの作用強度である伸張率に相当する.2017年度は2気圧までの範囲において,雰囲気圧力がプロパン拡散火炎のすす生成量およびすす前駆体生成量に及ぼす影響を調べた.数値解析には1次元反応計算ソルバChemkin-Proを用い,数値モデルにはSaggeseらの機構(297 化学種,16797 素反応)を用いた. 実験結果から,すす生成量は圧力の増大に伴い大きく増加することがわかった.既存の数値モデルは圧力に対する傾向は概ね再現性があるものの,実験では大きな増加率を示した.すす前駆体の計測結果は,数値モデルの予測結果に対し,大きな前駆体ほど増加する傾向を示した.数値解析結果では,圧力に対する前駆体の増加率以上に粒子が成長する傾向を示した.数値モデルの分析を行った結果,モデルとしては炭素数20-40程度の芳香族炭化水素が粒子表面に凝集し,質量が増加する経路が高い支配性を示しており,改善・調整のポイントであることを明らかにした. なお,3年間の成果に基づき,本年度は論文2報,解説記事1報,学会発表6件の報告を行った.
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