研究課題/領域番号 |
15K00586
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
清田 佳美 東洋大学, 経済学部, 教授 (60216504)
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研究分担者 |
鈴木 孝弘 東洋大学, 経済学部, 教授 (30192131)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゲル / 水晶振動子 / ゆらぎ / アドミッタンス解析 / 有機溶媒 / 結晶ー非結晶 |
研究実績の概要 |
微量水分の相挙動とQCM応答ならびに、ゲル体の含有する溶媒・ゲル構造と微量揮発性有機分子の吸着に伴うQCM応答に関する前年度の成果をまとめ、学術論文として発表した(JCEj2017, 東洋大紀要2017, Macromolecular Symposia, in press)。昨年度の成果を踏まえ、検討項目に有機溶媒ゲルを加え、そのゲルのQCM複合における安定性評価を行う実験系を構築するとともにデータ取得を行った。誘電率の小さな溶媒に親和性を有する有機ゲルを用いて、これをペーストしたQCMを新たに作成し、有機溶媒含有条件で温度揺らぎに対するQCMの発振変動を観測した。有機ゲルは温度に依存して結晶化ー非結晶化する直鎖脂肪族系のゲルを用いた。ゲルがアモルファス相を有する高温域(40℃以上)では、溶媒も揺れ易いことになり、QCMの基本振動の揺らぎが増加した。一方、溶媒が(アモルファス相のゲルと比べ)ゲルネットワークによって固定されている相を示す低温域(10-40℃)では、基本振動の揺らぎは小さいことが明らかとなった。すなわち、ゲル化溶媒を用いる場合は、ゲル化によって基本振動の揺らぎは自由な非ゲル化溶液に比べ小さくなることを確認することが出来た。一方で、溶媒をマクロに固定するゲル体ではゲル高分子鎖の吸着によるQCM応答感度が増加するため、微量物質の吸着を観測するQCMでは、適切なゲル化条件を設定する必要がある(バックグラウンドの揺らぎに起因する振動が無視できなくなる)ことも明らかになった。文献調査により、マルチQCM概念によって基本振動数の揺らぎをキャンセルする手法の可能性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
微量吸着を観測するために、先ず、基本振動が安定することがとても重要である。測定系の精度(例えばネットアナのサンプリングレート等)はハード面の制約もあるものの、ゲル化することによって生じる揺らぎを押さえることが予想以上に困難なためと考えている。このことはある程度想定していたことなので、デュアルQCMを適用して差シグナルを取得することによってキャンセルするテクニックを検討する必要があるとの認識に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、デュアルQCMを適用して、揺らぎをキャンセルする可能性を検討する。ただし、デュアルにしてもそれぞれのQCMの揺らぎが同期する訳ではないので、揺らぎの傾向を観察し、観測値に基づいて経験的に揺らぎをキャンセルさせる(例えば両QCMの偏差の経験値を関数化し適用するなど)方法について検討する。 揺らぎのキャンセル方法を確立することが出来れば、微量物質の観測に向け、前進することが可能と考えている。 今年度の検討で溶媒を含むゲルで被覆したQCMが揮発性有機溶媒(特に溶媒として固定されにくい溶媒ほど)に対して感度よく応答することが明らかになったので、引き続き、極微量の有機溶媒と接触した際のQCM応答を系統的に観測し、ゲル構造とQCM応答の相関データを蓄積する。この系に対してもデュアルQCMを適用する。さらに、文献調査に基づき新たなハイドロゲルの候補としてPEG鎖を有するゲルを候補として基本振動数の揺らぎに及ぼすゲルの影響を検討・評価する。溶媒ゲル化の構造とQCMの揺らぎ(発振周波数、共振抵抗値に及ぼす影響)をまとめ、今後の指針を示せるように図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年中に英文誌に論文を2報投稿し、一報は2017年3月に掲載されたものの論文の掲載料の請求が次年度になったこと、他の一報も2017年3月にアクセプトサレ掲載が確定しているものの掲載料の請求が次年度になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に掲載料として2報で8万円程になり、使用することが確定している。
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