当該年度は、新たな試みとしてヘリウムマイクロプラズマを分解源としたオンラインマイクロプラズマリアクターを試作した。具体的には、石英ガラス製のインナーシールコネクター(内径0.25~0.53 mm,長さ40 mm)を放電管とし,両端外周に2枚の銅箔電極を接地した。この放電管を2つのアルミ製端子を有するテフロン性円筒内に設置した.端子は放電管に設置した2つの電極に接触させ,外部から接地と高電圧印加をそれぞれできるようにした.プラズマ生成に必要な低周波高電圧印加はオゾン発生用高圧電源を用いて行った。まず、試作したリアクターをキャピラリーガスクロマトグラフのカラムと水素炎イオン化検出器(FID)との間に設置し、リアクター作動時のFID信号の減少からリアクターの分解能を検討した。 燃料油中に含まれる含酸素化合物であるメチル-tert-ブチルエーテル、エチル-tert-ブチルエーテルおよびメタノールをモデル試料として検討したところ、リアクター作動時にFID信号の減少が認められたものの信号は完全に消失しなかった。FIDを本研究室で開発した原子発光検出(AED)デバイスに交換してモデル試料の酸素原子に対するAED感度を検討したところ、化合物間の感度差が完全に改善できなかった。したがって、本研究の目的を達成するためにはプラズマリアクターの分解効率を向上させる必要があると判断した。しかしながら、プラズマリアクターから直接AED信号を検出することに成功したことから、検出条件を最適化することにより、本研究の目的を達成させるデバイスとしての機能を有していることが示唆された。 これまでの検討結果から、加熱分解型マイクロリアクターが本研究の目的を達成するために適当であると判断し、AEDデバイスと接続した測定システムを構築した。分解及びAED検出条件を最適化し、モデル試料の酸素原子に対するAED感度を同一にすることに成功した。
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